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この作品には性的描写が含まれています。
18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
NC17 for explicit sex.


 ザンザスの自室に入ると同時に、綱重は彼に詰め寄った。
「一体何考えてんだよっ、皆の前でいきなりあんな……!」
「隠しておきたかったのか」
 ぐ、と言葉に詰まったのは、こちらを見つめてくる真摯な瞳の所為だ。だがその反応が図星だと思われたのだろう、溜め息が聞こえてきて、綱重は慌てて弁解をはじめた。
「僕らの関係を恥ずかしく思ってる訳じゃ、っあ!?」
 言い終わる前に抱き寄せられていた。
 厚い胸板に当たっている頬がカッと熱を持つのが分かる。見られたくなくて、胸板に押し付けるようにして顔を埋めた。
「……その……つまり、皆にはいきなりあんな所を見せるんじゃなくて、ちゃんと、話したかったんだ」
「ああした方が手っ取り早い」
 ぴしゃりと言われ、思わず、笑ってしまう。
「それはそうだけど」
 途端、あんなに憤っていた自分が馬鹿馬鹿しくなってくる。過ぎたことは仕方ないし、別に知られたくなかったわけじゃないのに。
 紅い瞳を見上げれば、まるでそれが合図のように大きな手が顎を掬った。近づいてくる顔にそっと目を閉じ、
「……待って」
 唇が触れる寸前で、体を後ろに引いた。
「シャワー、浴びたい」
「駄目だ」
 思いもよらない否の言葉に綱重は大きく瞬きをする。
「昔からテメーは風呂が長い」
「……シャワーだけだよ、二分で出てくるから」
「駄目だ」
 ザンザスは綱重を先程よりも強引に抱き寄せた。そのまま口付けても良かったのだが、尚も身を捩って逃げ出そうとしている往生際の悪い綱重の耳に唇を近づける。
「もう一秒だって待てねえ」
 そして真っ赤に染まる耳を見て、口端を上げた。


 ザンザスの舌が肌の上を滑る。まさか何か味がするわけでもないだろうに、筋肉に沿いながらじっくりと丁寧に、何度も何度も舐め上げてくる。首から胸を通り、下腹部まで辿る。また腹から胸へと戻り、そして胸の中心でぷくりと立ち上がっているそこに舌が触れた。
「っ、」
 ギュッとシーツを握った。吐く息は馬鹿みたいに熱い。頬が熱を持つ。胸をはだけた状態で息を荒くしている自分とは違い、目の前の男は未だネクタイすら外していないことが殊更羞恥を煽った。
 片方は舌、片方は指で弄ばれる。くちゅりと水音を立てながら吸い付いてくる唇。痛いくらいに指で弾かれて、軽く歯を立てられて、女のような高い声が勝手に口から零れ落ちる。
「ザンザス……!」
 堪らず名前を呼ぶとちらりと紅い瞳だけがこちらを覗く。その間も、円を描くような動きで指が、舌が、綱重の乳首をなぶりあげる。
「ちょ、待っ……き、キス、したい、から……!」
 切れ切れになりながらも告げると、ザンザスはようやく唇を離し顔を上げた。紅い瞳が徐々に目前に近寄ってくる。しかし唇が触れる寸前で、動きが止まる。戸惑いを隠せずに見つめると、ザンザスは、くっと意地悪げに唇を引き上げた。
「しねえのか」
 挑発するような口調。誘われるまま、ザンザスの顎を引き寄せて唇を奪う。唇に触れる瞬間、瞼を下ろした。目を瞑っていても、ザンザスが今どんな顔をしているのか、どんな瞳でこちらを見ているのか、綱重には容易く想像することができた。まるで網膜に焼きついてしまっているかのように、瞼の裏に浮かぶ紅。その情欲に満ちた視線を感じながら、綱重はザンザスの唇を恐る恐る舐め上げた。緩く開いた唇からそっと舌を侵入させれば、すぐに絡めとられてしまった。そのまま、翻弄される。
「ん、んぅ……!」
 先ほど皆の前でした口付けなど優しいものだったと感じるような、激しいキスだった。吸われ、舐められ、離れたかと思えば息をつく暇もなく再び口付けられる。しかもその間にも、指で胸を弄られて。
 数分後、ハァハァと息を乱しながら瞼を上げた綱重は、瞬間、体を震わせた。こちらを真っ直ぐに射貫く強い眼差し――大型の肉食獣のようだ、と思う。今まで口唇を合わせていた所為で、しっとりと濡れている艶やかな赤から一層の赤が覗くのに目を奪われる。ザンザスはそれこそ本物の獣のように、ぺろりと舌なめずりをしてみせて、綱重の下半身へと手を伸ばした。制止する間もなく、慣れた手つきがベルトを外し、下着ごと脱がされてしまう。
「あっ……!」
 そして何も隠すもののなくなった下肢の中心で勃ちあがっているモノを大きな掌が握り込んだ。
「ん、ァッ……やだ……待っ、あ、ああー!」
 数度、上下に扱かれただけで綱重は達してしまった。

 白濁で汚れた手を拭うザンザスの姿に、綱重は唇を噛み締める。それはこれまで何度も見た光景だった。監視の目を潜り抜け、二人、ホテルで落ち合う度に見る光景。羞恥と悔しさが溢れた。
「っ……また、僕だけ……」
 俯き、苦々しげに呟く綱重の頬に小さなキスが落とされる。慰めるような優しいそれに促されて顔を上げた先には、しかしせせら笑いを浮かべた顔が待っていた。
「こんなに感じやすくて、今までどう女を抱いていた?」
「うるさいな!」
 枕を掴み、思いきり投げつける。ザンザスは当たり前のように軽々と受け止め、投げ返してきた。
「ぶっ」
 思いきり顔で受け止めてしまい、後ろに引っくり返る。
「避けるぐらい出来ねえのか」
「……うるさい」
 枕といえど、痛かった。鼻を擦りながら言えば、鼻先に小さなキスが落とされた。ザンザスの笑みは相変わらずだったけれど。
「よっぽど下手な女ばかりだったんだな」
 ――それは違う。綱重は、心の中で呟く。
 今まで自分は、性に対し淡白な上、不感症に近い人間だと思っていた。どんな美女と同衾してもいつもどこか冷めていた。ザンザスだから。相手がザンザスだから、こうなるんだ。少し触れられただけでどこもかしこも熱くなって、勝手に声が出て。全部ザンザスだからだ。……こんなこと、死んでも言ってやらないけれど。
「じゃあザンザスは、上手な人とばかりシてきたんだね」
「妬いてんのか」
 益々深くなるザンザスの笑み。顔を顰めかけるが、ふと、思いついた。
「うん。すっごく妬いてる」
 紅い瞳が驚きに見開かれる様を見て、溜飲を下げた綱重は、満面の笑みを浮かべてザンザスに抱きついた。首に腕を回し、耳元に唇を寄せる。お願いがあるんだ、そう前置きしてから囁いた。
「――今日は最後まで、して欲しい」
 ザンザスの瞳が更に大きく見開かれた。
 キスは数えきれないほどした。こうしてベッドの上で裸で抱き合うのも初めてではない。けれど綱重はまだザンザスを受け入れたことがなかったのだ。
 心臓の鼓動が早くなっていくのを感じていた。震える指が、ザンザスのネクタイを外す。そしてシャツのボタンを外しはじめた綱重をザンザスは止めなかった。


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