Summer 1

「海に行きたいです」
 その直感力から、神の采配と謳われるボンゴレ9代目ですら、『どうだい、最近は』という問いかけにこんな答えが返ってくるとはとても予想できなかったのだろう。ザンザスは、瞠目している父の顔を見上げ、それから自身の隣に立つ少年に視線を戻した。
「……何を言ってる?」
 父の代わりに尋ねれば、少年はふんぞり返りながら言った。
「だから、最近は、海に行きたい気分ってこと!」

×

「明日、水着と浮き輪買いに行こうなっ」
「ああ? んなもの何で買いに行かなきゃなんねえんだ」
「だって浮き輪がないと溺れちゃう」
「テメー、泳げもしねえのに海に行きたいとか言ってやがったのか!」
「だから海に行って練習するんじゃん」
「……一人でやってろ」
「ええー!? 一緒に行かないのっ?」
「行くわけねぇだろ」
「えー」
「るせえ」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」

 ガツンッ!

「いってぇー! 何で殴るんだよ!」
「見てんじゃねえっ!」
「あー痛い。超痛い。ズキズキする」
「黙れ、カス」
「もうこれ一生後遺症に悩まされそう。9代目に言わなきゃー」
「……」
「ちなみに一緒に海に行ってくれたら治る気がするんだけど」
「死ね、ドカス」

 ドカッ!

「暴力反対!」



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