さすれば世界は君のもの

 クーデターを起こし失敗したヴァリアーは、大きな枷をはめられた。部隊の存続は認められたものの、行動の制限に監視の目と、事実上、活動停止に追い込まれてしまったのだ。そんな中、門外顧問の息子、綱重がヴァリアーのボスに就く。当初は9代目と門外顧問がよりヴァリアーを掌握しようとしているのだと思われたが、綱重はそれまでよりも自由に彼らが動くことを許可し、彼らに仕事も与えた。
 これは、綱重がヴァリアーのボスに就いてから数年が経った、ある日のこと――

「Sランクが1つに、Aランク3つの暗殺を明日の昼までだぁ!?」
「んもう、忙しいわね」
 言葉とは裏腹に、スクアーロとルッスーリアは口元に笑みを浮かべて書類をめくっている。どれが一番楽しめる仕事か見極めようとしているのだ。
「王子知ってるぜ。明日の午後、9代目に呼び出されてるんだろ。ボスったら相変わらずせこいポイント稼ぎー」
 しししっ、と笑みを浮かべるベルフェゴールに、綱重は小さく肩を竦めてみせる。
「いや、ただの手土産だろう。ポイント稼ぎなんて君にはもう必要ないようだからね」
 マーモンの声に全員がそちらを振り向いた。
「明日は幹部連中だけじゃなく、門外顧問まで呼ばれているって聞いたよ」
「何だとぉっ」
「あら。それって、つまり」
「おっ、俺は認めんぞー!」
「バーカ。お前が認めなくたって、9代目と門外顧問が認めりゃあ10代目は綱重に決まりなんだっつーの」
「バカとはなんだ!」
「ししっ。本当のこと言われたからってキレすぎ」
「最近、幹部連中の間で綱重の評価がうなぎ登りだって聞いてたもの! ついに、なのね! でも他に候補者がいないんだからもっと早くに決まってもよかったのに。って、ベルちゃんもレヴィもこんなおめでたいときに喧嘩しちゃだめよん」
 ルッスーリアの言葉に綱重の唇が緩く弧を描く。ちなみにベルとレヴィは今にも殺し合いを始めそうだが、この部屋にそれを真剣に止める人間はいない。
「上の奴らはよっぽど僕には継がせたくなかったらしい。ま、今もそうだろうけど、ようやく諦めがついたようだな」
「仕方なくでもなんでも、就任さえしてしまえばあとは全て君の思い通りさ。ドン・ボンゴレになったらまず僕の報酬を上げてくれよ」
 可愛らしい赤ん坊の外見からは想像もつかない要求を口にするマーモンに綱重は苦笑いとも呆れともつかぬ小さな笑いを漏らした。
「報酬はともかく、今よりもあんたらが好き勝手に動けるようにはするつもりだ。『7年前のあれ』以前のように、ね」
 今まさにナイフを投げようとしていたベルの手がピタリと止まる。受けてたとうとしていたレヴィも、構えを解く。
 数秒の間、室内を支配した奇妙な沈黙を破ったのは、ルッスーリアだった。
「っていうか、お祝いパーティーの準備もしなくちゃいけないじゃない! 本当に大忙しだわ〜」
「おい、パーティーなどと……!」
「ハイハイ、レヴィは綱重が10代目になっちゃってここから居なくなるのが寂しいのよね。気持ちはわかるわよ、でも涙をこらえて祝福してあげなくちゃね」
「違う! オレが10代目と認めるのはあの方だけ……げふぅっ!!」
 後ろから思いきり蹴りをいれられ蹲るレヴィを、もう一度蹴り飛ばしながら、スクアーロが手の中の書類を掲げた。
「う゛お゛ぉい! 今回は綱重も、指示だけじゃなく参加したらどうだぁ? これが最後の任務になるだろうからなぁ」
「……そうだな」


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