ここへおいでよウサギちゃん

 流石の雲雀恭弥と言えども、この珍事には唖然とせざるを得なかった。
「……」
「朝起きたらこうなってたんだ」
 ニット帽の下から現れたのは、白く大きなうさぎの耳。話す声に合わせて金糸の合間から生えた二つのそれがピクピクと動く。
「うぎゃっ! や、やめろ!」
 ぐいっと引っ張っても、頭部から離れない。本当にそこから生えているようだ。しかも。
「温かいね」
「ちょ……!」
 フワフワとして手触りもいい。いつまでも触っていたくなる。
「っ、もういいだろ、離せよ」
「もっとじっくり調べなきゃ」
「ん、ぁ……!」
 意図せず飛び出した上擦った声に、少年は驚いた様子で手で口を押さえる。
「感じる?」
「やらしい言い方するな! くすぐったいんだよ!」
「ふーん。あと少しだけ我慢しなよ」
 なでなで。
 さわさわ。
 触る度にビクビク跳ねる体が愛しくて、ついしつこくしてしまった。
「お前に頼った俺が馬鹿だったっ!」
 顔を真っ赤にした少年が、うさぎの耳をピョコピョコさせながら応接室から出ていくのも当然だった。雲雀は彼の去り行く後ろ姿を眺めながら、もしかして尻尾も生えているんじゃないだろうかと考え――そこで、目が覚めた。


「君、手から炎が出せるんだから、頭からうさぎの耳を生やしたりも出来るのかい?」
「……お前、俺を馬鹿にしてるのか」
 自身の特殊な体質を厭わしく思っている少年が、顔を真っ赤にして応接室から出ていくのも当然だった。
 やっぱり無理だったか――雲雀はそう思いつつ、草壁に用意させた“うさ耳カチューシャ”を手に、彼の後を追う。

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