華やぐシリーズ番外

「骸さま?」
「どこに行くんれすか?」
 問いかけに微笑みだけを返し、僕は“彼”の元に向かった。
 彼のことを知っているのはミルフィオーレの中でも極僅かだった。彼を逃がそうとする人間はいないだろう。
 思った通り、小鳥は何も知らずに飼い主の帰りを健気に待ち続けていた。
「――あれえ?」
 ゴシゴシと目を擦る姿は鳥というよりも子猫のようだ。持っていた本――児童書、それも初等学校に通い出したくらいの子供を対象にしたもの――を脇に置き、大きな瞳でじっとこちらを見つめる。このビルの厳重な警備を知っているからか、視線に警戒は含まれていなかった。恐がらせないよう、彼の知っている姿でここまで来たのだけれど……これならばわざわざ幻覚を使わなくても良かったかもしれない。
「自分のこと、覚えていらっしゃらない……ですか?」
 まいったな。苦笑いで頭を掻く。僕が作り上げたレオナルド・リッピという人間らしい反応だ。
 彼が目を見開いた。
「もしかしてレオ君?」
「え?」
「顔は違うけどレオ君でしょ?」
「…………ええ、はい、よくわかりましたね」
 辛うじて顔には出さなかったが、非常に驚いた。彼には今の僕が“レオナルド・リッピ”ではなく“六道骸”に見えているらしい。つまり幻ではない、本来の僕を捉えているということだ。
 グイドの肉体を使い、レオナルドと名乗っていたときには気がつかなかったが、どうやら彼には術士としての才能があるようだ。
「前もカッコよかったけど、もっとカッコよくなったねー。あ、“イッシンジョーのつごう”で辞めたのって整形するからだったの?」
「いえ」
 否定だけを返す。すると、こちらの雰囲気が変わったことを感じ取ったのか――やはり勘が鋭い――目を泳がせて。
「えーっと……白蘭は今居ないんだけど……」
「はい。知っています」
 術士の才能があるにしても、今はただの男娼上がりだ。
 白蘭が溺愛していたペットを、ボンゴレより早く押さえたかった。それだけだ。何か利を得られれば良し、役に立たなければ殺すだけ。そう思って、ここまで来た。
 白蘭が討たれたことを告げるのが正しいのだろう。動揺させた方が情報を引き出しやすい。
 けれど、思った以上に僕は彼のことを気に入っていたらしい。
「だからこうして君を攫いにきたんですよ」
 他の男を想って泣くところを見たくない、そう思う程度には。

‐‐‐‐‐
骸さま夢になってることに途中で気づいて放り出しました。白蘭さま夢シリーズだっての!
勿体ないからここに置いちゃうけど

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