明日見る世界に何を望む。
今を楽しめず何を願う。
憂いを写すその瞳で、
絵空事など映せるものか。
己も見ようとせず、
変えることなどできはしない。
消え行くことを望まぬのなら、
朽ちたくないと願うなら、
芥子を手折り、
此処から這い出よ。
咲き綻んだその微笑みに、
白々しい笑みで返してしまう。
好いた相手を前にして、
塞き止めてしまうこの想いを、
そっと、そっと伝えることができたなら。
たった一言だけで、
小さな言葉だけで足りるわけない想いだけれど。
終ぞ実ることもなく、
出会わなければ良かったと嘆くくらいなら、
留めて邪魔したその気持ちは捨ててしまおう。
長く生きてきたが、
虹を見たことは一度と無かった。
濡れた髪が鬱陶しく、
鼠色の空を八つ当たりのように睨んだ。
喉から音は出なかった。
“初めて見たならきっと心踊るよ”と、
日に焼けるのも構わずに水遊びをしていた君を、
不意に思い出した。
変人だ、と周りからは見られそうだが、
呆けてその場に立ったまま思い出と感動に浸ることしか私にはできなかった。
睫毛を震わすあんたに、
見惚れない奴などいないだろう。
睦言を囁かれれば、
愛で尽くしたいと思わない者はいないだろう。
もどかしいものだ。
妬いて焦がれて憎らしくさえ思ってしまう。
夕闇にそんなものを隠して、
夜風で頭を冷やさないとあんたに会いに行くことなど叶わんくらいに。
ラタトゥイユを作るとき、
リンゴでも混ぜてみようか。
ルビーも煮詰めて、
レンゲで味見もしなきゃね。
ローズは添えてあげるだけ。
悪い魔女みたいに、
呪いをかけたりなんてしないわ。
ただ、小さく小さく願うんだから。