怒りは炭酸 嫉妬は蜂蜜
喜色の黄色 悲哀の藍色
絶望はビターチョコ
虚無の底にはざらめが少々
あなたにとって甘美なものは
白紙の日記
やけにすり減った鉛筆
無味無臭の花瓶
畳まれたお気に入りのワンピース
寄りかかったはずの重みは誰宛てだったのだろう
ハニーミルクのマグカップ
柔らかなブランケットにくるまって
前髪を優しくはらう指先
窓から差し込む黄金色の光
つられて微笑む16時過ぎ
慎ましく、慎ましく、丁寧に
余すことなく折り目をつけて
皺も染みもないシーツを敷いて
滑らかに、滑らかに、終わりなく
雨音の先に、卵の割れる音を聞いた
飴板を隔てて、塩水が溢れて飛散した
足跡を振り返れば、虚ろが此方に手を伸ばす
欺かれていたままで、それを過ぎることにした
穏やかな夢を見ていた
緩やかな堕落に暗闇なんて無くて
溶け落ちる寸前で掴まれた
あの手の感覚をきっと
この先何度も思い出すのだろう
小さな川の底から、
夜空を見上げられたなら
朝日と一緒なんてごめんだわ
夢から醒めたいわけじゃないもの
小粒みたいな光だけで充分よ
私は、
それが美しいと想うのだから
重ねる言葉と重ねられた言葉
深くに埋めて思い出すことも無かった
何かの拍子に張り付いてしまった
トランプのように
表だけしか残らない
消えたも同然のそれを戻そうとして
剥がしたのならきっと、
どちらも帰っては来ないだろう
粉砂糖が散りばめられた夜
空には、一口食べられたきび団子と
小さいたくさんの金平糖
わたあめは暗く翳っているけれど、
どれもが素敵で愛しい
星は降るもの消えるもの
月に願っても笑われるだけ
借り物で仮初めの光に
頭を垂れて手を組み祈るは
愚者のみと
穏やかな日々に身を沈めて
ゆるりゆるりと生きていく
不安ごとを忘れ
悲しいことを忘れ
辛いことに蓋をして
心地良い陽だまりのなかを
歩んでいく
いつか、そうではなくなると
理解しながら歩んでいく
『おやすみ世界』と言って
明日の光を目指して眠るのでしょう
『おはよう世界』と言って
今日の光にまぶしさを覚えるのでしょう
あなたは今日は何を感じる?
どんなことに一喜一憂する?
わたしは遠くから
あなたをいつも見つめているけど
気持ちまでは分からないから
教えてくれたら嬉しいな
それでもし私に対して
何か思うことがあったなら
それはとても、とても嬉しいな
さて
光のおかげで、何の色にでもなれる
『私』はいったい誰でしょう?
片手に収まるぐらいの
小さなガラスの瓶の中
詰めこんだ季節を眺める
光に翳せば眩しくて
闇の中では淡く光る
見ていると
懐かしいような寂しいような、
…胸を締め付けられるような
不思議な気持ちになるのはきっと
落としてしまえば壊れてしまう
儚い存在故のことだろう
ひとつの問いに
ひとつの解答を
では、ひとつの問いに
いくつの過程があるだろう?
答えへ至るまでの過程
問への解答者にとっては
輝かしいもの
ひとつの問いに
複数の人が解を出せば
それぞれに
過程が存在するかもしれない
だけどそれは
誰に見てもらえるのだろうね?
小さな埃のような感情も
積もりに積もれば山になって
覗きこめばふわりと舞って
心を掻き乱す
定期的に掃除をしなければいけないね
暖かい日差しと少し冷たい風を同時に身に受けると、
夏の暑い日にプールで涼をとった記憶が思い出される。
そのまま溺れてしまいそうになるほど、鮮明に。
けれど、青空は歪まず、
話し声は明瞭に聞こえ、歩を進める足も軽やかで。
今を生きていると、突きつけられる。
そらに溺れる
黄金色の光に目を細め
濃紺に足を絡めとられ
暗闇に息をつまらせて
体を包む冷たさと未来への期待を抱いて
気泡にまみれて眠りにつこう
指折り数を数えよう
ゆっくり ゆっくり 丁寧に
思い出となった日々を
優しく留めておけるように