それは時に刃となるもの
枷となり重しとなる鎖
麻薬のように痺れ、
幻のような幸福をもたらすもの
触れれば溶ける柔らかさ
淡い色の安らぎ
止めどなく溢れるその感情は、
されど一言で片付く簡素な言葉
ふわりと香る髪をすいて
絡めた指と三日月に
柔らかな熱で色付く花よ
果てども永久をと願う私を
どうか許しておくれ
枯れ果て地に落ち朽ちたはず
なのに還ることすら出来やしない
行き場も居場所もないままで
ひび割れたまま終わりを待つ
視線が交われど、君が映すは虚ろのみ
猫のごとく擦り寄せた頬に熱は無い
この瞬間に安堵しながら
今日も今日とて、慈しむ
つば広帽子でも被って、日向を歩いて
美味しいの詰まったバスケットなら
僕が持っていくから
海でも、野原でも、小さな公園でも、
何処へだってついて行くから
日向で笑う、君が見たい
滝のような涙にはハンカチを
小雨のような涙なら指で拭ってあげて
潤むだけならご愛嬌
それでも溢れてしまうなら
魔法をかけてあげようか
対価は君のその
可愛らしい真っ赤な顔で
学習しろよ?
人に向けて指をさすなと
何度も言ってきたはずなのに。
目の前のこいつは何十年経っても
俺に指をさしてくる。
いつになったら学習するんだろうか?
学習してる?
呆れた顔で私の手をとって、
苦い溜息をつきながらお説教してくる。
その反応が面白いから、
そんなことをしてくれるのは君だけだから、
いつまでも続けてしまうんだけど。
君もきっと学んでいるよね?
己の目元をするりと撫でるあの人の手は、
壊れもののようにさえ感じられるのに、
何故か酷く抗いがたい何かを感じた。
手を伸ばして、互いの指を絡めて、
腕の中に閉じ込めてしまえたなら、と。
そんな浅ましい空想をしてしまうくらい。
一瞬で奪われるなんて思いたくはなかった。
今の君を魅了して、
これからの君の瞳を奪って、
いつかの君さえ虜にしよう。
君が僕にしてくれたみたいに。
僕が救われたみたいに、とはいかなくても。
君が目を向けるものが、
少しでも増えるように。
君の手を取り、隣に居よう。
芽を出した草花が風に揺られるように、
目の前にあるアホ毛がひょこひょこ揺れる。
引っこ抜きたい衝動にかられながら一言。
「お前頭良いよな」
会うたび1度は何かしらからかって来るやつだけど、
今日は後ろからおどかされた。
しかも、滅多に言われることのない褒め言葉が唐突に来たものだから、
返事はお約束のような一言に。
「あんた明日雪降らせるつもり?」
窓辺で空は見ない
頬杖をついて、
少し気の抜けたその背が見えなくなることを願う
驚かれないように目線は少し下げて
何でもないような顔をして君を待つ
言葉だけ残されても、
貴方の声でなければ意味はないの。
写真だけ残されても、
貴方の骨ばった体躯に触れられなければ満たされないの。
貴方には我が儘に聞こえるでしょうね
ぐずぐずに溶けてしまわないように
甘いものは程々に
ほろ苦いくらいがちょうど良い
溶けて消えても苦味が残る
きっとそれは忘れることなく
甘いだけよりも心に残る
“愛している”というその声は
いったい何処へ消えてしまったのだろう
いくら記憶を辿っても
いくら耳を澄まそうとも
もう二度と聞くことは叶わない
“貴方”が言わないのなら
私がその言葉を言いましょう
貴方の言葉ではないとしても
いつか貴方が答えてくれるかもしれないなら
何度でも何度でも
“愛している”と
いいよいいよ、愛してあげる
貴方は私の嫌いな人
いいよいいよ、殺してあげる
貴方は私の大切な人
毒花を捧げる
守りの花だからきっと貴方を守ってくれる。
伝え聞いたお菓子の作り方で、
愛しい人を想いながら、
今日も花を摘みに行く。
毒花を食らう
もう少し彼女と過ごす時間が欲しいがために
耐え続けているけれど、
それでも辛いものがある。
見舞いの品の彼女が作ったお菓子は、
ほんのりと紅く色付いている。