あなたにおぼれた(シャンル)
※パロ
突然傷が疼く日がある。
たまに掻きむしって目玉をえぐり出したくなる時すらあるのだ。
しかしそれをしないのは、疼く古傷を愛しい彼が優しく慈しむように撫でてくれるからだ。
「まだ痛むか?」
「あぁ、少しな」
「そっか……」
三本走る目元の傷は、海で生きた自分にとって勲章である。
この消えない傷はいい思い出もあれば、もう二度と経験したくない思い出もあった。
特に雨の日は必ずといってイイほど傷は疼き出した。
「カッコイイよなぁ……」
「なんだ、お前にも古傷くらいあるじゃないか」
「だってこれは俺の我が儘だし」
左に走る切り傷は、随分と昔に彼が自分で付けたものだった。
海に出たいと言っていたが、まだまだ小さな彼にはダメだと口にした途端刃物を突き立て出来たもの。
あまりに突然の行動に思わず怒鳴り付けてしまったのを覚えている。
「もうお前も大人になった。海に冒険にいけばいい。そうすればいくらでも」
「いい」
傷を撫でる指が離れ、触れていたそこには優しくキスが降り注いだ。
リップ音を立てながら三本の爪痕を癒していくと、見上げる自分をじっと見つめる。
「もう海はいいんだ」
「でも昔はあれだけ騒いだじゃないか」
「あれは、シャンクスと一緒にいたかったから」
失った腕、失った仲間。
何も無くなり体一つで帰って来た自分を抱きしめ彼は言う。
「シャンクスの側にいたい」
細くて小さくてまだ成人として未熟な体の彼は、大きくて広くてずっと深い海のような心で自分を受け止めてくれた。
あぁなんて心地好い………
あなたにおぼれた
(君は昔から帰る場所だった)
END
シャンクスは海賊ですが、ワンピの世界ではない海賊なので海賊王とか四皇とかないのでしがない海賊です。
んでルフィも海賊王とか目指してません。
そんなパロ。