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触れる生温かい温もりの他に、少しずつ瞼の裏に明かりが見えはじめた。
まるで夢から覚まさせるような光は少しずつでも確実に自分に向かって来る。
まだ沈んでいたいのに、まるで引きずり出すようにそれは自分を導こうとする。



「楽しいだろ?」



そうかもしれない。



「嬉しいだろ?」



そうかもしれない。



「随分曖昧に答えるんだな」



少し、迷っているから。



「何に?」



本当にこのままでいいのか。



「居心地が良いならいいんじゃねえか?」



うん、でもこれが正しいのかわからないんだ。



「正解なんてないだろ。自分がよければいいじゃねぇか」



そうかもしれない。
でも何か違うんだ。
今自分がしていることは、ただ。



「逃げている……と?」



………そう。



「逃げたらダメだなんて誰が言った?」



でも逃げてもいいなんて誰も言ってない。
だから、だから。



「だから、もう……いらないんだ」



絡み付くような腕と視線から離れるように突き飛ばす。
少し悲しそうな顔をしながら、でも笑みを絶やさないように名前を呼ぶ。



「ルフィ」

「………よ」

「ルフィ、ルフィ」

「その姿で俺を呼ばないくれよ!」



簡単に倒れた体はローの足元に転がった。
そのままパタリと動かなくなったそれに、背を向けるようにしてベッドへ潜り込む。



「いらない」

「本当に?」

「もう、大丈夫」

「何が?」

「それがなくても」



頭からシーツを被ると、二度と見ないであろうそれの姿が瞼の裏に焼き付いていた。
大丈夫、そう、兄はここにいるのだ。
形はなくとも、自分と常に共にあるのだ。
そりゃあ、いずれは別れを告げなければならないけれど。
今はもう、大丈夫。
兄の変わりは、いらない。



「ル…フィ……」



耳障りな声が篭って聞こえた。でももうあれは兄ではないのだ。
いや、最初から兄ではなかったのだ。
あれは、自分の願望から生まれた醜い肉の塊なのだ。



「まぁ……寂しくなったらまた言え。代わりを作ってやる。……それか、俺が代わりにでもなってやるさ」



至極嬉しそうに弾んだ調子で語るローに、返す言葉なんてなかった。
元より返す必要なんてないのだ。
なぜなら。



「……エース」



貴方はまだ、ここにいるのだから。


















Ich werde bereite bekommen, um Ihnen auf Wiedersehen zu sagen.














END


すみません、特に意味のない連載でした。
ただ、ローが作ったエースぐん人形を抱っこして甘えてでもやっぱ本物じゃないから依存しちゃならんのだーって思い直ったルフィを書きたかったのさ(長)
ローはエースの後釜を虎視眈々と狙っていればよい。
とかそんな話にしたかったのが技量が足らずこんな感じです。
すみません、こんなものでしたがお付き合いありがとうございました。
次はパロで盃兄弟やろっかなーと思ってます!

お題Thanks 千歳の誓い様




補足(お題の訳)

Sie sind nicht.
(君がいない)

01 Weil die Stelle, dab ich dadurch zuruckkam, nicht von Ihnen gebrochen
wurde.
(僕の帰る場所は君に壊されてなくなったから)
02 Wenn Sie waren Sie nicht und wurden es, den Sie wesentlich sind?
(君が君でなくなったら、君は一体誰?)
03 Der Verstand von mir, den wer schlob, den es zur Stelle gebracht wird, wo
Licht nicht reicht.
(閉ざした心を光の届かない場所へ、連れてって)
04 Obwohl Sie gestort haben sollten, jedes mein Herz.
(心ごと壊してくれたらいいのに)
05 Ich werde bereite bekommen, um Ihnen auf Wiedersehen zu sagen.
(君に別れを告げる準備をしよう)

外国語(ドイツ語)で5題でした。


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