おやしらず(エーサボル)
※パロ
「おはよーサボ」
朝洗面台にて歯磨きをしているサボに挨拶をする。
もう既に洋服に着替え終えている後ろから、寝起きのまま髪が跳ねまくったルフィはひょっこりと顔を出した。
そんなルフィに笑みを返し、ガラガラとうがいをして口の中を濯いでから、サボはおはようと改めて返した。
その時鏡越しに見たルフィの顔は、何かに物凄く目を剥き驚いている。
「どうしたルフィ?」
「サボ、血……いっぱい」
「あー、最近歯茎弱くなってるのかも」
「エースー!サボが血ぃ吐いたぁあああ!!」
と全速力で朝食の準備をするエースのもとへ駆けていくルフィに、今度はサボが目を剥いた。
吐き出した水は血が混ざり薄く色づいている。
まあ確かに普通の磨き過ぎにしてはちょっとばかし血が出すぎかもしれない。
そう思い思い切り口を開け鏡を覗いて見ると。
「あー……」
なんとなく分かった。
奥歯のその奥の盛り上がり。
ちょっぴり見える白い影。
そういえば気になる口内の痛痒さ。
「とうとうきたか……」
「どうしたサボ!何がとうとう来たんだ!?」
ルフィを小脇に抱えフライパンをもったままのエースが鏡に突如現れる。
せめてどちらか置けば良いものを、慌てているのかどちらも離そうとしない。
「歯が生えたんだよ」
「なんだサボ、お前まだ乳歯があったのか」
「違うよ、親知らず」
最近は歯医者なんてご無沙汰だったから少しだけ憂鬱になる。
まだわからないが、もし虫歯にでもなっていたら抜歯。
痛みを考えると無意識に身構えてしまう。
「親知らず……?」
「俺らが親を知らねえからか」
「違うよ。皆誰しも奥歯の更に奥に生えるおっきな歯なんだ。虫歯になりやすいし、皆早めに抜歯するんだけど歯が大きいから抜いたら縫わなきゃいけないんだよ」
「縫う……」
「それって、やっぱ痛いよな?」
恐る恐る聞くエースに、まぁ多少は。
ご飯もあまり食べれないかもと告げると、二人は全力で泣きながら叫んだ。
「親知りません!でも兄弟は知ってるんでご勘弁を!!」
そういう意味の歯じゃないんだけどなー。
と思いながらも、何やら必死で何かに拝み始める二人の姿がなんだか可愛かったのでサボは暫く二人をそのままにしておいた。
おやしらず
(親知らずは親が知らない内に生えるから親知らずなんだよ)
(じゃあ俺達の歯は全部親知らずだな)
(だな!)
END
歯を磨いてたら真っ赤な水でびっくりしてたら、あぁそうか生えかけの親知らずんとこ思いっきり磨いたからだと思った瞬間に考えたネタ。
まだ生えかけだから恐い親知らずっ