おとうと。(サボル)
※パロ
冬がやって来る。
秋を通り過ぎて、冬がやって来るらしい。
末の弟は何より食べることが好きな分、それはとても残念なお知らせだった。
「今年は栗拾いにいけないなぁ」
「栗ご飯……」
「キノコも怪しいなぁ」
「松茸ご飯……」
嘆きの声は本当に残念だと訴えるようで、いつもの元気に走り回る姿は想像出来ない。
ぐるるる……と鳴るお腹を押さえ、考えただけで溢れた涎を垂らす始末。
それを拭ってやりながら、ヨシヨシと頭を撫でてやる。
「でもその分早く冬の料理が食べられるぞ?」
「鍋!」
「そうだなぁ……今年はエースが鮭でも釣ってくるかも?」
「石狩鍋!!」
と、新しい情報に浮かれる姿に現金なやつだと思いながらよかった、と胸を撫で下ろした。
とにかく食い意地の張った弟は食べ物に関しての記憶で忘れたことはない。
あれが食べたかった、これが食べたかったと後で騒がれてもこちらもどうしようもないのだ。
「なぁサボ、今年はエース早く帰ってくるかな?」
「そうだなぁ……早く冬が来るから帰ってこれるかもな」
「ホントか!?やったー!!」
体全体で喜びを表す弟の姿にこちらも嬉しくなっていた。
エース、エースと呼びながらはしゃく姿は今年で17歳になったというのに幼さが見える。
時折鮭、鮭、いくら、と聞こえるのはご愛敬としてほしい。
「あのな、俺サボの作る料理が好きだ!」
「そう言ってもらえると俺も作りがいがあるなぁ」
「あったかくて優しい料理。きっとサボがそうだからだろうな!」
「………え?」
「だから、大好きだ」
満面の笑みで語る弟は、もう既に弟の顔ではなくなっていた。
こうやって大きくなるんだなぁ、なんて子持ちの親みたいな台詞が頭を過ぎる。
「ありがとう、ルフィ」
くすぐったそうにしながらも鼻先を胸に擦り付ける弟。
そんな姿にこりゃあやっぱり一生弟離れ出来ないなあ。
そんな風に改めて思った。
おとうと。
(それは唯一の宝の存在)
END
サボルって、いいなぁ。
改めて思ったのでやっちまいました。
エースはじいちゃんにより無理矢理漁師にされました(笑)