長 b | ナノ



声と臭いを辿ってやって来た部屋、二階の一番奥がどうやら幸村の部屋らしい。
二人で住むには大きすぎて、そして何も無さすぎる家に政宗は目を細めた。
幸村の事だから家は騒々しく鬱陶しい程ものが散乱して、あの忍の事だから文句を言いながらそれを片付けて。
家の中は暖かい空気に包まれて、足を踏み入れたら迎え入れてくれる……そんな家を想像していたのに。



「Shit!俺の知らない時間がありすぎだ」



思わず吐き捨てた政宗は、舌打ちをしつつ拳を強く握った。
その手を愛が力強く握る。
あまりにもキツく握るので思わず顔を見つめると、そこには青白い顔をし片手で口元を覆っている愛の姿。



「どうした?」



そう声をかけるが震えて声も出ないらしく、なんとか指を指すのは部屋の中。
その部屋は、勿論。



「な……んだ、これは」



臭いはここから、声もここから。
でも、信じたくなかった。



「駄目だよ旦那、あれほど言ったのに」



優しい口調で幸村を支え宥める佐助は、体中を真っ赤に染めていた。
ただ佐助自身には傷はない、どちらかと言えば幸村の方が……特に腕は酷い有り様だった。
応急措置で包帯を巻いたのだろうが、残念ながら白いそれは赤く変色している。



「あ、ア……ぅあ」

「そうそう、今日は懐かしい顔に会ったんだ。覚えてる?ほら……」



幸村の顎に手を掛け、ついっとこちらを向かせる。
向けられたのは、赤にまみれてもあの頃と寸分変わらぬ愛しいもの。



「奥州筆頭伊達政宗に正室の愛姫」



幸村の薄く開いた唇を撫でるように佐助の指が動く。



「二人とも揃って、旦那を嘲笑いに来てくれたよ」



その言葉と共に、なぞるように動く佐助の指に幸村はガリッと音を立てて噛みついた。
すぐにそこは鮮血が溢れ出すが佐助は眉一つ寄せず、寧ろ気持ち悪いくらいに笑みを作り幸村を見つめる。
息を呑んで幸村を見つめた。
その瞳はギラギラとこちらを見つめ、細められた瞳孔がこちらを捉えて離さない。



「幸…村……?」



絞り出した声にやっと気付いたのか瞬きをした後ゆっくりと拡がる瞳孔。
みるみる拡がるそれは、一瞬だがまるで血のように赤く見えた。























やっと対面!
でもなんだか血生臭くなってしまいましたね……
てゆか佐助はマゾなのか?(聞くなよ)



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -