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緩かに、束縛

政幸









今日は何故か自然と目が覚めた。
寝起きは良い方だが、この部屋で一晩明かすと大抵体が痛く負担がかかるためかそう簡単には目が覚めないというのに。
前髪の隙間から瞳だけを動かし周りの様子を伺うと、隣にいる筈の人間の姿が無いことに気付き身体を起こした。
普段は彼は早起きではないと従者は言うが、自分は彼の寝顔を見たことがない。
そんな彼はこんなに早くから目覚めているなんて考えもしなかったため、一瞬で頭が冴え瞳は無意識に彼を探していた。



「早いな」



声につられて顔を向けると、部屋の外に腰を下ろし外を見つめる彼を見つけた。
幾分かだらしなく見えるのは彼もまた寝起きだからだろうか。
着流された着物から見える肌に昨晩の事を思い出し目を逸らす。



「ま、政宗殿こそお早い」

「まぁ……俺はな。お前はまだ辛いだろ、もう少し寝てな」



振り向きそう語る彼の顔を見て、もう一度床につくなど出来なかった。
まだ温まりたい思う気持ちを押し込め、布団からするりと抜け出し彼の横へと腰を下ろす。



「もう、目が覚めてしまいました」

「……勝手にしな」



ただ彼は外を見つめていた。
何を見ているのか皆目検討もつかないが、己も同じように外を見つめる。



「雪、溶けねぇな」

「今年はなかなかしぶといでござる」

「……だるまでも作るか」

「政宗殿……?」



珍しく自ら外に赴く彼に続き足を外へ向ける。
勿論部屋から羽織るものを手にしてから追いかける。
まだ裸足に草履は冷たかった。
それでも彼は素手で雪をかき集め、少しずつ形を作っていく。



「政宗殿、手が」



肩に羽織をかけてから、段々と赤くなってきた彼の手を両手で包み込んだ。
もう少しで霜焼けになってしまうかもしれない。
それでは彼の手が一番大事なときに使えない。



「政宗殿、続きは某が作ります」

「なぁ」

「はい」

「アンタの名前、もしこの雪の字を使った雪村だったら……この手も冷てぇのか?」



まだ彼は何を見つめているか分からない。
それでも心はここにあると、そう言葉は告げている。
だから自分は、少しだけ手に力を込めしっかりと彼の手を握る。



「某の手は、いつでも政宗殿を受け止められるよう温まっております」

「そうか」

「はい、ですからいつでもお待ちしております」


はぁ……と息を吐きながら少し手を擦ってやるとこちらに視線を向ける彼と目が合った。
何か言いたそうな顔。
それでも口はつぐまれ、音になることはなかった。



「まだ冷えます、中で温まりましょう」

「アンタが温めてくれんだろ?」

「……し、仕方ありませぬ。今日だけですぞ!」



手を引かれて部屋へと帰る。
まだまだ雪が積もっているから、自分達が残した足跡はすぐにまた消えてしまうだろう。
それはそれで構わない。
別に残したものに興味はない。
今は先を、考えよう。



「OK、partyといこうか」



そういうと、いつもの意地悪そうな笑みを浮かべる彼。



あぁ、やっと私を見てくれましたね。



















緩かに、束縛

(そうやって貴方は私を少しずつこの檻へ閉じ込めてそして私も少しずつこの檻から出られなくなって気が付いたら二人だけの世界になっていたらなんて幸せなのでしょうね)












あぁ、冬なんて冬なんて。










END



ちょっこら執筆していない時期が長かったのでリハビリにシリアスな政幸でした。


冬が終わらなければ、幸村はずっと奥州に。
雪がずっと降り続けて、自分を温めてくれればいいのに。
でもそれは言えなくて。
まさに願望。


まさかの政宗がちょっと病んでるようなでも実は幸村も病んでるような、そんなお話。
駄文失礼致しました(土下座)



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