寂寞
親幸→政
彼は、優しかった。
いつも自分を一番に見てくれたし考えてくれた。
ちょっと強引だったりもしたけど部下に慕われていたし、誰よりも頼れる人間だった。
武田が滅んだ後も、彼は憐れみなどかけず対等に接してくれた。
勿論手を伸ばせば何時だって助けてくれようとした。
でも、出来なかった。
「気持ちいいでござる……」
「だろ?」
久しぶりに手を引かれて連れていかれたのは海だった。
山に囲まれて育った自分に初めて海を見せてくれたのは彼だった。
海はしょっぱいだとか潮風が気持ちいいだとか、全部彼から教わった。
この海の向こうには何があるんだろうとか、沢山話もした。
「なぁ、幸村」
「なんでござろう」
「……好きだ」
「…………」
貴方に好きだと最初に言われたのも海でした。
砂浜に立って、太陽をじっと見つめていたはずの貴方はいつの間にかこちらを向いて真剣な目で言ってきましたね。
「俺じゃ、駄目か?」
なかなか答えない自分に心配になったのか、ちょっぴり自信なさげに聞いてくる貴方が可愛かったのを覚えています。
「某も……好き、でございます」
「そか……うん、そうか」
はにかんだように笑う貴方が、とても愛しかった。
そのままそっと手を繋ぎ、しっかりと握り合う。
「どうか、どうか某の手を離さないで下され」
「離すかよ……愛してる、幸村」
片方しかない貴方の瞳。
その目は今、自分しか見ていない。
「某も、愛しておりまする…………元親殿」
あぁ、ただ願わくば。
その隻眼が反対の瞳であればと。
何度願ったことか。
寂寞
(わたしは、きっと、しあわせで。)
END
親幸→政で。
大阪の陣の前。
政宗は東軍、自分は西軍、もう逢い引きすらできない。
地味に親幸好きーをアピールしようとして惨敗←