雨
政→幸←佐
雨が降った。
それはしどしどと地を潤し、生まれ出(いずる)魂を呼び覚ますように静かに雨が降った。
戦が終わった地には、いずれ草木が生え広がる。
時間はかかるが、時間とは癒しをもたらすものだ。
だからそこに種を蒔いた。
アイツが好きだと言った花の種を蒔いた。
あれから三年、毎年春にその花は蕾を開いた。
それを見て、お前の顔を思い出す。
あぁあの頃は楽しかった。
「アンタは今、何してるんだ?そっちで」
見下ろした小さな花に訪ねるが、答えてなんてくれはしない。
だってそこにお前はいない。
「今思えば楽しかったな」
そんな風に感じるようになったのは、やはり自分が年をとったからだろうか。
そう自傷気味に作った笑みを見たらお前はなんと言ってくるんだろうか。
「アンタが助けた命、大事にしてるぜ」
そう伝えれば、花が風にそよぎまるで答えているような錯覚に陥る。
そう言えば、骸を埋めた場所に種を蒔いた。
答えているのは正しく本人なのかも知れない。
「花は雨で再び花を咲かせるが、骸は肥やしになるだけだ。人間てのは儚いもんだな」
先程まで晴れ渡っていた空が陰り、雨雲を呼び寄せていた。
風も雨の臭いを運んでいる。
ふと花から視線を反らすと、こちらに近付いてくる人影があった。
駆け寄って来た人物は、懸命に自分の名前を呼んでいる。
「俺は今幸せだぜ、アンタのお陰でな」
途端、雨が降った。
ザァザァと音を立てるそれはまるで嵐のようで、体に打ち付けるように降りだした。
傘を差した相手は、慌てた様子で走り寄って来る。
「…ま………ねど……!」
「迎えが来た、帰るぜ」
しどしどと降る雨に濡れた花は、まるで泣いているかのように見える。
花弁を伝い落ちる滴は止まることなく流れ続けた。
それを横目に政宗はニヤリと笑みを作る。
「今行くぜ、幸村」
ザワザワ揺れる花を踏み散らかし走り出した。
一斉に花弁が散り舞い上がり、打ち付ける雨によって落とされる。
「Good by.アンタはそこで指を咥えて見てな」
向かった先には、緋色の着物が良く似合う愛しい人。
雨
(くちをしや、くちをしや)
END
政宗ばっかのつまらないお話←ぁ
迎えに来たのは勿論幸村、花の下の骸は佐助です。
オカンは幸村庇ってお亡くなりになりました。
まーくんがその後はきちんと面倒見てくれてます(笑)
そんな暗いような暗くないようなお話。
ただ佐助に未練はあっただろうよ……