彼的独占論
佐→幸
暖かな日差しというものは人の心を落ち着けるものである。
暑すぎず眩しすぎず丁度良い加減のその光は、心を芯から穏やかにするものであった。
そしてそんな日差しの下、普段は熱血漢である幸村も例がいなくその暖かさに包まれて流れるときをただ楽しんでいた。
勿論片手に茶、片手に団子を忘れずに。
「戦がないのは少し物足りない気もするが、たまにはこういうのも良いでござるなぁ……」
縁側に無防備に放り出された足をぷらりぷらりと揺らしては休む間もなくもぐもぐと口を動かし、ぺろりと団子を腹に収めていた。
皿に積まれた串の数はそろそろ数えるのが面倒になってきた頃である。
「旦那……」
「む?佐助、どうしたのだそんな顔して」
ひらりと音もなく現れた己の忍びをさして気にも留めることもなく、幸村は後ろに控えた者を隣にと招いた。
それに答えるように横にしゃがみこんだ佐助は、皿に積まれた串の量と幸村が手にしている団子の量を指さしながら呆れたようにまた主人を呼んでいた。
「旦那、この団子どうしたの?俺様5本しか用意してなかったのに明らかに増えてるよね」
「もらったのだ」
「誰に!?」
「皆に」
「皆って!?」
「才蔵と六郎と鎌之助と……」
「あーはいはいもう言わなくても大丈夫ですよー」
まったくこの城の人間といったらなんと主に甘いことか。
あれだけ注意しても誰一人この真田幸村に厳しくすることはしない、寧ろ甘やかしている甘やかし過ぎている。
不本意ながらオカンと呼ばれる立場になった佐助はそれはもう大層困っていた。
甘味ばかりでは体に悪いからバランスよく食事を考えていてもこうして周りが知らないうちに幸村へ団子を与える与える。
しかも自分の目が離れている隙を狙っては繰り返す始末。
いい加減にしてくれと以前幸村から団子を無理やり奪った事があったのだが、その日の主はそれはもう忘れることがないくらい烈火の如く怒り暴れ城が半壊した。
そんな惨事はもうこりごり、どうせ尻拭いするのは自分なんだからと佐助は団子の規制に関して口を挟まなくなっていた。
勿論この上田で一番、いや世界で一番幸村に甘いのは佐助である。
が、それは幸村のためになることであれば故の甘さであり彼に害があることに関しては極端に厳しい。
それが勿論幸村本人が行うことに関しても、だ。
「しっかし今日はえらいたくさんあるねぇ」
「うむ!某は誠に幸せである!!」
団子如きでそんな幸せそうな顔してくれるのは旦那くらいですよ、なんて言ったら如きとはなんだと叱られてしまったが実際そうだと佐助は思う。
この乱世、小さなことでも幸せを見つけられる幸村が本当に羨ましかった。
自分には決して出来はしないその心に佐助は感心するばかりである。
「佐助は幸せではないのか?」
「俺?そりゃあもう幸せですとも、こんな素晴らしい主様がいますから」
「……褒めても何も出ぬぞ」
「いやだなぁ、そんな下心ありませんて。旦那が笑顔でいてくれたら俺様も幸せなんだよ」
(……でも)
お皿片づけたいから残ったの食べるか後でにするか決めてくれます?なんて誤魔化して聞いてみると案の定答えは今食べる、で。
「佐助見てみろ、秘儀六爪流!」
「こら団子で遊ばないの!!」
(その笑顔が自分だけのものならば、)
彼的独占論
(そんな我儘も言い出せない臆病な自分)
End.
初BASARA文です。
佐助には穏やかな日なんてないのです!(恋の)
んでもってどろどろしてるといいよね、なんて。
次は政宗→幸村か佐助←幸村か悩むところ。