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例え罪悪感でも、

佐→幸



裏切者。
そう言われて逃げ続けてもう何回目の朝日だろうと瞼を閉じていてもうっすらとわかる明るさにそう思う。
服装はあの頃から着用しているもので、幾人もの血を浴びてしまったが着替える気はおきない。
ただ単に面倒なだけだったから、そんな理由だった気がする。
懐にしまったクナイは標的が現れるまで飛ぶ事はないが、いつでも研かれ準備は万全だった。
閉じていた視界を開き気配を探る。
中に感じる気配は標的のものだ。
口に当てた布がから漏れる己の息の音さえ煩く感じる。
いっそ息が止まってしまえばいいと思うほどに。
瞬きすることすら忘れて細い隙間から見える相手にニタリと笑みを溢した。
そのまま、ただ真っ直ぐに獲物を飛ばした。
闇夜に紛れた黒いクナイはヒュンッという音とほぼ同時にドスッと鈍い音を立てて突き刺さる。
下から聴こえたくぐもった声と、気配が一つ消えたことに口角がつり上がり自然と笑みが込み上げた。

あぁ、今日こそやっと!!



「さす…け……」



下に降りてクナイを引く抜く。
捲られた布の下には血塗れの元主。
掠れた声で己の名を呼ぶ姿に体が歓喜に震えていた。



「旦那、愛してるよ」



頬に手を添えありったけの笑みを誂え優しく言葉を連ねると、今まさに閉じようとしていた幸村の瞼から涙が零れた。
そのまま頬を伝った滴は佐助の指まで辿り着く。



「すまぬ……すま、ぬ……」



紡がれたものは謝罪の言葉ばかり。
震えながら吐き出すのは、裏切られた絶望や裏切った罵りではない。



「旦那、旦那。俺は旦那の事を」

「すまなかった、俺は…お前に何……も…」



それっきり、幸村は声は発せずピクリとも動かなくなった。
血色の良かった肌も今では青白く、爛々と輝いていた瞳はもう二度と何かを写すことはないのだ。



「やだよ旦那、そんな謝んないでよ。謝ってそれでバイバイなんてそんな……そんなっ!」



動かなくなった四肢を揺すると、はらはらと涙を流して佐助はその体にすがり付いた。
まだ人の温もりがあるそこに額を擦り付けて懇願する姿は、今までの佐助を知る人間には異常に映っただろう。
それでも佐助は流れる雫を止める術もなくただ力無い体を抱くばかりだ。



「旦那が、せめて俺を憎んでくれれば良かったんだ!愛し合えないなら……愛してもらえないなら、せめて」



血で濡れたこの衣は貴方に憎愛を抱いてもらうためのものだったというのにと。
主従の壁に阻まれて中途半端な関係ならいっそと崩した末路には、これはあんまりだと胸が騒ぐ。


「好いてくれないなら……せめて、せめてっ!!」



別の形で、貴方の一番になりたかった。

















例え罪悪感でも、

(何か残っただけまだマシだよ)










END



佐助は報われない時が一番彼らしいと思うのです←ぁ
ちなみにこっそり政幸だとか言ってみます。
そんな描写微塵もないけど


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