短 b | ナノ
共生

政幸

紫黒様へ相互記念に捧げます。
微グロ?に少し注意。










手に入らないものはなかった。
多少の我儘なんてすぐに通った。
ただ、どれもこれもすぐに飽きて捨ててしまった。
結局手に残ったのは、赤い……

















「飽きた」



その声に顔を上げた小十郎は、手にあるものを受けとると直ぐに処分すると返事をしてから席を外した。
玩具がなくなってつまらなくなった政宗は、仕方がなしに煙管を咥える。
閉められた襖の隙間からヒラリと花弁が舞うのが見え、政宗は一つ考え事をしてから立ち上がた。



「そうだ、あれに会いに行こう」



思い立ったらすぐに行動する。
まだ灰すら落としていない煙管をそのままに、政宗はある場所へ足を向けた。
キシキシと踏み板は政宗の居場所を音にして伝える。
たどり着いたのは自室より少し離れた、大きな庭。
今度はジャリジャリと砂利石を踏み締め、辿り着くのは中央に造らせた一室。
大きくもなく小さくもなく、朱色で染められたそれは異常な存在感がある。
その部屋の扉の前に立つと、政宗は当たり前のように中へと声を掛けた。



「俺だ」



たった一言。
名前すら名乗らないがそれは合言葉である。
その声に反応してかチリンと音が鳴った後、ずりずりと布の擦れる音がして一拍置いてから戸が開いた。



「良い子ににしてたか?」



戸口のすぐそこに待っていた相手の頭を、よしよしと撫でてやると相手はゆるりと口に弧を描きこう問うた。



「随分と来るのがお早いですね。先日差し上げた物は如何いたしましたか?」



チリリンと首に下がる鈴を鳴らしながら、相手は触れる手を払い除ける。
肩から伸ばされた髪がサラリと落ちた。
今度はそれを手で掬い、唇を寄せて政宗は答える。



「飽きた」

「全く、貴殿はすぐに新しいものをねだるのですね」

「俺は別に新しいものが欲しい訳じゃない」

「では何故私に会いに来られるのですか?」

「お前が欲しいからだ」



抱き上げた体は昔よりも軽く、持ち上げることも容易になっていた。
与えた緋色の着物も、丈が余ってずりずりと引き摺ってしまう。
一つまた、チリンと鈴の音がしてから政宗の胸元で声が聞こえる。



「まるで赤子のような事を申す政宗殿。貴殿は私からたくさん奪っておいて、まだ私が欲しいとお言いか」

「俺はお前が欲しいだけだ」

「もう私は政宗殿のものではありませぬか」



ほれ、この通り。
抱き抱えられたまま着物の裾をたくしあげると、そこにあるはずの二本は片方が膝から下がなかった。
痛々しくも白い包帯が巻かれ、きつく結ばれている。
無くなってから時間が経っているためか、もう血が滲み出ることもないし政宗が触れても痛む様子はなかった。



「お前の一部だ。でもお前じゃない」



腿の付け根から切り落とされた先までゆっくりと掌を這わせ、何度もそこを撫でる。
その手を取り、今度は反対の足へと移し変えると彼は笑顔でこう言うのだ。



「なれば、次はこちらを差し上げましょう」



さぁ、と脇差しを手に持たせ大きく振りかぶらせる。
切れ味は以前実証済み、容易く切り落ちる事を解っていて切っ先をそこへ向ける。
そう、後はそれを下ろすかどうかは政宗次第。





































「また彼処へ行かれたのですか」



目を離すとすぐにこれだ、小十郎は溜め息を吐きながら主を見つめる。



「あれは俺のものだ。会いに行って何が悪い」



ぽつりぽつりと主へ導くように畳に続く赤い波紋は、まだ乾いていないのか指を這わすとその方向へ跡を伸ばした。
そのまま跡を追い主を見上げてまた溜め息。



「今度は、すぐに捨ててしまわれないといいが」

「何か言ったか」

「いいえ、独り言です」



手にしている白く長いその塊は、恐らくつい先程まで持ち主の一部だったのだろう。
綺麗に切り取られたのか断面も美しく赤と白が目に眩しい。
赤い身の部分へ舌を滑らせ滴る雫を嘗め取ってから、政宗は中央の白い部分へ唇を落とす。
固いそれはただ政宗の腕の中に収まる。
指先は側面を感触を味わうように何度も指の腹で撫で上げられていた。
白い白いと思いつつも美しく妖艶だと思っていたものも、こうして切り離されてしまうとただ病的に白い塊にしか見えない。
やはりあれは持ち主の一部だったからこと美しいのだと感じた。



「政宗様」

「なんだァ」



いい加減口出しする小十郎に苛立ったのか、鋭い左目が刺すような視線を送ってきた。
それを受け流しながら、軽く頭を垂れる。



「……もうそろそろ夕餉の時刻にございます。お預りしたもの、きちんと料理させていただきました」

「Ahー、じゃあ今日は久しぶりの肉料理か。なら彼奴も一緒にdinnerといくか……小十郎」

「準備は整えております」

「OK。そうだな、もうあいつは自力では来れねえからな……」



手にしていたものを丁寧に風呂敷に包み仕舞い込むと、政宗は重い腰を上げ畳の染みを踏み締めるようにして部屋を出た。
視線の先には赤い異常な建物が一つ。
壁も屋根も真っ赤に染まり、不気味で誰も……政宗以外は近づこうとしない。



「俺が、迎えに行ってやらねえとなぁ……」



口元に着いた赤を親指の腹でグッと拭うと、政宗は小十郎に背を向け庭の一室へゆったりと足を向けた。
そこは、そこの住人とこの城の主だけの世界から切り離された場所である。
そこで何がどう行われているかなんて、外の世界の人間は干渉してはいけない。
そこから先に踏み入れてはならない。
政宗は欲しいモノは全てそこに閉じ込めた。
愛でて愛でて愛でて、一心に愛情を注いだ。
でも結局、手に入らなかった。
それはどんなに縛り付けても、己の物にはならなかった。
そうして結局最後に残ったのは、赤い……





















共生

(それは共に生きるということ)














貴方に私が生かされて。
私に貴方が生かされて。

私達は互いになくてはならない存在だったのですよ、政宗殿。











庭先から、微かに鈴の音が聴こえた。



END







私なんかと相互してくださった神様、紫黒様に捧げますシリアスかつ微グロな感じで政幸でした。
どっちも攻略なんて欲張ったら残念な出来に……なりまし、た(あぁ)
所々意味不明ですみません(汗)
大まかに言うと、政宗さんに捕まっちゃった幸村さんが少しずつ政宗さんのものになっていきますよ身も心も。
小十郎も面倒になってもう何も言いませんよ、だって我儘主様だからね。←
なお話でした。
取り敢えず幸村をがじがじ喰う政宗を書きたかったのでオブラートに包みあげて調理してみました。(は?)
ちなみに共生の意味は、複数種の生物が相互関係を持ちながら同所的に生活する現象……だそうです。
ありがとうW○kipe○ia。
幸村の一人称がおかしいのは趣味です(ぇ)


それでは紫黒様、この度は相互ありがとうございました。
リクエストに沿えきれてない感がバリバリですので、返品可能です(汗)
その際は新たに書き直させて頂きますm(_ _)m
ではではこれからよろしくお願い致します。


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