9
外食なんて、久しぶりにした。
普段から自分がなるべく作ってやっていたため本当に久しぶりだった。
まさかデートの途中で手作り弁当を開くなんて出来ないから、少しリッチにレストランなんか入ったりして。
勿論リサーチ済みのお店だ。
「うまかったー!」
普段お洒落な店で食べるような二人ではないから、少し緊張していたのが本当のところだ。
でもいざ店に入ってみると、そんなこと気にしなくなるくらいルフィとの会話に夢中になっていた。
正直味なんて覚えていない。
でも恋人らしい空気を味わえた。
それだけで、胸は一杯になっていた。
「すんげーうまかったけど、やっぱエースの飯が一番だ!」
「嬉しいこと言ってくれるなぁルフィ」
「だからさ、」
「牛丼食いたいとか言うなよ」
「ぐぅ……」
弟が次に何を言うかなんて簡単に読める。
何年一緒に暮らしてると思っているんだ。
この見た目も中身も可愛らしい弟は、ムードとか空気とか関係ない。
「と、言いたいところだが。兄ちゃんも正直牛丼食いたい」
「じゃあ!」
「俺より先にあの店着いたら、ご馳走してやろう!」
言うや否や駆け出して、ルフィとの距離をグンと拡げた。
今まで一度だって俺に勝てたことがないから、今回もきっと俺の勝ち。
後ろでぎゃあぎゃあ騒いでいる声が少しずつ近付いているが、負けず嫌いなもんだから大人気なくも本気で駆け抜ける。
どうせ、俺はこの可愛くて仕方がない弟のためになんでもしてしまうのだから。
初めて誰かの為に生きた
(どんなことでもお前のためなら)