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リビングを過ぎ、部屋に入ると目を覚ましたルフィが目に入る。
ぱちぱちと瞬きを繰り返す瞼をじっと見つめた。
睫毛の長さはあんまり長くないけれど、人より多いそれが風を起こすんじゃないかってくらい激しく動く。



「……おは、よ」



昨日の今日だから、喉がカラカラに渇いて上手く言葉を発っせなかった。
恐る恐る手を伸ばし、頬を指でなぞる。
泣き腫らした後を指の腹で感じて、胸が痛んだ。
じっと見上げる双瞳が、隠しきれない罪悪感を引きずり出すのではないかと構えてしまう。
焦点がまだあまり定まらないのか、ゆっくりと繰り返される瞬き。
ああいっそ、もう一度眠ってくれても構わないのにと目元を掌で覆った。



「どこ、行ってたんだ」



呟くような声にビクリと体を揺らしてしまう。
別にやましいことなんてないのに、これではまるでありますと言っているようだ。



「サッチ達に、二次会誘われちまって……ごめん、連絡遅くなっ」

「ちがう、今」



目を覆う手に己のそれを合わせ再び問われた言葉。
それに今度は己が瞬きを繰り返す番だった。



「おきたら、エースいないから。また、どっか行っちまったのかと思って」



添えた掌がルフィの温かい手に覆われると、朝の冷水で冷えた指がじんじんと熱を戻していった。
心地好い温もりは、心細いとでもいうように普段とは全く違ったか細い声で言う。



「顔、洗ってきただけだよ」

「ほんとに?おれ、あんなメールしたから……エース帰って来ないんじゃないかって、こわくて」

「ルフィがいるところが俺の帰る場所だ。何があっても、俺はここに帰ってくる」



例えお前が望まなくても。
そう答えると、ルフィの口元にゆっくりと笑みが作られた。



「エース怒ってないか?」

「寧ろ俺は怒られる立場だと思うんだけど?」

「でもエース、ちょっと乱暴だった」



何がなんて聞かなくてもわかる。
残念ながらしっかり覚えているようだ。
なんだか恥ずかしいような。
でも、やっぱり。



「なぁエース、手ェどけてくれよ!」

「それは無理な相談だ」



もう少し、合わせられる顔になるまで待ってくれ。










初めて嬉しくて泣いた

(お前のそんな所に救われて俺は、)




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