長 | ナノ
よん。




ルフィは、自分の2つ下の可愛い弟分だ。
小柄で、仕草や行動が幼かったため歳より随分と幼く見えていた。
また、彼を幼く見せたのは、彼の兄の存在だろう。
小さい頃から随分と大人びていて、ルフィと3つしか離れていないなんて最初は冗談かと思った。
小さい頃に両親がなくなっているため、兄が親代わりだった事が影響しているのだろう。
ルフィの両親は、子供達に莫大な資産を残して死んだ。
元々都会の資産家だったらしい。
それが何故、こんな田舎に移住してきたのかは知らない。
ルフィなんてまだ言葉もろくに喋れない内に、祖父に連れられやって来た。
つまり都会の頃の記憶なんてないため、ここが彼の故郷になる。
最初の頃は警官だという祖父もこの村に共に暮らしていたが、一年もしない内にいなくなった。
仕事を考えれば仕方がないのだろう。
まぁ長期の休みには顔を出していたし、この町唯一の喫茶店を営むマキノが、彼らの面倒を任されていた。
姉であり母のようなマキノは、彼らの生活を十二分に支えていた。
ルフィも、彼女には随分と甘えていた記憶がある。
そんなマキノの喫茶店の前を通り掛かる。
ここまでくればもう目と鼻の先だ。
ルフィの家に行く前に、顔を出すのも良いかもしれないという母の提案で、木製の扉を引いた。
軋むドアの音と、カランカランと懐かしいベルの音がする。



「こんにちわ」



母の声が、店に小さく響くが何の応答もなかった。
確かに店先には営業中の札が掛かっていたのに、と首を傾げるが、一向に誰かが出てくるといった気配はない。
よく見れば、椅子はテーブルに上げられている。



「たまたまいなかったのかもしれないわね」

「…………」

「もしかしたらルフィ君のところかもしれないわ」



そんな母の声で店を出た。
まぁ今いないのならば仕方がない、もう二三日は滞在する予定だ。
また後程顔を見せに来ることを決め、再びルフィの家を目指す。
念のためもう一度振り向いて店の中を覗いてみるが、残念ながらそこに姿伺えなかった。



















マキノの店を通りすぎ、一本道をただただ奥へと進む。
周りに民家は少なくなり、鬱蒼と金木犀が咲き誇ればそこがルフィの家だ。
家をぐるりと取り囲むように植えられた金木犀の中で、まるで門のようにそびえ立ち花を咲かす二本の樹が入り口である。
どこよりも甘い香りがするこの屋敷は、昔から変わらぬ姿でそこに建っていた。
小さな頃に大きいと感じた家だったが、こうして成人して今見上げてもその感想は変わらなかった。
平屋で、まるでお屋敷のような日本家屋に安堵する。
昔からよく遊びに来ていたこの家は、どこよりも記憶通りだった。
二本の樹には、低い位置に横に引かれた何本もの切り傷がある。
小さい頃ルフィと背比べをして付けた傷に懐かしさを覚えそこをなぞる。



「あの頃はゾロもルフィ君もそんなに小さかったのね」



母も目を細めて言った。
腰程の高さに刻まれたものは、仲良く二列に並んでいる。



「変わらないのね」



その言葉がやけに響いた。






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