なぜ、何故、人は誰かを愛するのでしょうか
ゾロル←サンジ。
しゃりしゃりしゃり。
今日のおやつはアップルパイにでもしようかと林檎の皮をむく。
そんな中突然開いた扉に目を向けることなく、入ってきた人物の名を呼んだ。
「おいクソゴム、おやつの時間にはまだ早いぜ」
「うー」
不細工な顔で椅子にどっかり座り込んだルフィはどうやらつまみ食いに来たわけではないようだった。
その様子にサンジは振り向くことなく林檎の皮をむく。
「また喧嘩でもしたのか?」
「……だって、ゾロがなんも言ってくれねぇから」
そういって更に拗ねたであろうルフィにやっと振り向いたサンジは手を止めることはせず話しを続ける。
「まぁマリモはおしゃべりってわけでもないから仕方ねぇだろ」
「でも二人の時くらい好きって言ってくれてもいいじゃんか」
いつもこれだ。
直球型なルフィはなんでも素直に言葉にする。
だからよく好きだと相手に伝える。
そしてそれをゾロにもして欲しいらしいが、どうもあの性格上素直に言葉で表してくれないらしかった。
それが不満でちょくちょくこうしてサンジに愚痴るのだ。
「言葉にしてくれねぇと、俺不安になるんだ。もしかして本当は俺の事嫌いなんじゃないかって」
膝を抱えて縮こまる姿に溜息を吐いた。
それはない、まずない、死んでもない。
ゾロはルフィにゾッコンで一筋なのは誰が見たってわかるのだ。
それがこのニブチンにはわからないらしい。
その鈍感具合はある意味素晴らしいと思う。
「なぁルフィ。言葉にして伝えるだけが愛情表現じゃないんだぜ?」
「でも……」
「あいつをよく見てみろ。観察して、あいつなりの愛情表現ってのを探してやれ」
そういってチラリと向けた目線の先には少しだけ見える緑の影。
「……わかった。じゃあ今日からゾロをよく観察する!」
「あぁそうしてやれ」
突然立ち上がるルフィの姿に緑の影はさっと消えていった。
そんなに心配ならちゃんと願いを叶えてやればいいのに、と思う。
「ありがとな、サンジ」
「礼はいいからさっさと行け。いつまでたってもおやつが出来上がらねぇぞ?」
「ししっ俺サンジのそういうとこ大好きだ!」
じゃ、なんて部屋を飛び出していく背中をただ見送る事しか出来ない自分。
それに思わず鼻で笑ってしまう。
「まったく……何やってんだ俺は」
呟きは誰にも聞こえない。
そして自分の想いも誰にもわからない。
しゃりしゃりしゃり。
ぷつり。
林檎の皮が途中でちぎれた。
集中力が切れたらしい。
「なぁルフィ。言葉にして伝えるだけが愛情表現じゃないんだぜ?」
自分はただ、こうやって君の幸せを願っている。
これもまた、愛情表現。
なぜ、何故、人は誰かを愛するのでしょうか
(愛してもらえないとわかっているのに)
END
ゾロル←サンジでございました。
ルフィの恋愛相談はナミですが、深いお悩みはサンジだといいな。
サンジ君ガンバ。