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真っ白な愛を抱く


エールで現代パロ。
エース16歳、ルフィ6歳くらいです。










昔から良く言われるのは、『優しいが何か足りない』という言葉だった。
確かにそうかもしれない。
女性や子供には優しくしなければいけないと思うし、お年寄りにも親切にしなければと思う。
ただその思うという行為の裏側に、自分は義務感を抱いていた。
そして先日も、付き合って欲しいと言われたので義務感で付き合う事になった相手に『優しいが何か足りない』と告げられてすぐに別れることになった。
まぁ別れたことに関してそんな悲しいとか残念とか感情的になることはない。
ただ自分は女性に望まれた事を叶えただけなのに、何故そんな悲しい顔で別れを告げるのだろうという疑問で頭がいっぱいだった。
……という話を親友のマルコにしたら盛大に溜息を吐かれた。



「…お前、弟のことどう思ってる?」

「ルフィの事?そんなの可愛い可愛い弟だと思ってるに決まってるだろ」

「それは弟がまだ子供だからか?」

「違う。ルフィだからだ」

「つまりはお前のそういうとこが足りないんだよぃ」

「は?そういうとこってなんだよ」



10歳の離れた弟は何をするにも愛らしくて、守ってあげたくて側にいてやりたくなるのだ。
兄だからとかいう責任感とか義務感だとかはなくて、自分の意志で弟のために何かしたいと思う。
両親がいなかった自分達兄弟にとって家族とは互いにしかいなくて。
得にまだ赤ん坊だった弟は兄である自分が父親母親がわりだと何度も言い聞かせ育ててきた。
その頃まだ中坊だった自分にはとても荷が重く、時には投げ出したくなる時もあった。
生きていくのが辛い、何故こんなに苦しいのだと思うこともあった。
そんな時でも弟が笑顔を見せてくれただけでなんでも出来る気がした。
自分がここにいる意味を実感できたのだ。
あの存在だけが自分にとっての唯一で、求めているもので、必要なもので。



「えーす!」



耳に入ったのは今年小学校に入ったばかりの弟の声。
視線を上げればどうやらそこはすでに家の前だったらしく、先に家に帰っていた弟はこちらに向かう兄の姿に気が付いたらしく出てきていた。



「えーす、おかえりなさい!」

「ただいまルフィ。兄ちゃんを迎えに出てきてくれたんだな、ありがとう。でも危ないから勝手に一人で出てきちゃダメだぞ?」



まだ自分の腰の高さにも満たない弟を抱き上げて言うと、素直にごめんなさいと言葉が帰ってくる。
目線の高さまで抱き上げた弟をしっかりと抱き直し、後ろにいる親友に向き直る。



「まるこ、こんにちわ!」

「おぅ、こんにちわ。全く、相変わらずだなお前ら兄弟は」

「あいかわらず?」

「仲良しってことだよぃ」



その言葉にルフィは満面の笑みで答える。
よっぽど嬉しかったのか、腕の中で少し暴れるくらいだ。



「ルフィは素直に育ったな」

「当たり前だろ、俺の弟だぞ」

「へいへい。ホント、お前の足りないものそのものみたいな弟だよぃ」



そう言ってこちらをじっと見つめるマルコの目は、これが先程の会話の答えだと言うようだった。
弟が足りないものそのもの……あぁ、そういうことか。



「それじゃ俺帰るわ」

「まるこばいばーい!」



元気いっぱいに手を振る弟と共に友を見送る。
背を向けて去ろうとする姿。
思わずそれを呼び止めて、先程の答えの感想を伝える事にした。



「マルコ!」

「……?」

「俺の足りないもの、わかった」

「そりゃあよかったよぃ」

「でもさ、ルフィは俺の足りないものだけど代わりじゃないぜ」



弟は俺が持てなかった感情を持って生まれてきたわけじゃない。



「ルフィが俺に教えてくれるんだ。俺がただ唯一愛すことができるようにって。この感情をルフィだけが教えてくれるんだ。ルフィだけを愛せるようにって。なぁ、これって神様からのプレゼントじゃないか?」



なぁ、そう思わないかマルコ。
















真っ白な愛を抱く

(弟だけが俺を導いてくれる存在)












END


高校生と小学生って萌ゆるのは管理人が変態だからか。
エースは愛するって感情を忘れてきたわけではありません。
その感情は対ルフィ用にしか発生しないんです。
と、いうだけの話←


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