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願ったモノは結局なんだったのか


573話以降のネタばれ有。
エールで原作から捏造話。
管理人の妄想塗れ←















熱いあついアツイ。
体の中から焦げ付く臭いに目も開けられなかった。
ジリジリと内臓が形を無くしていく感覚がわかる。
息なんて、出来そうにない。












これで、17回目だった。
決して数えることを忘れたりはしない。
これが、17回目のチャンスだった。

必死の形相で駆け寄る弟の姿は何度見ても飽きたらないなんて言ったら不謹慎だろうか。
でも自分なんかの為に命を賭ける弟を愛しい以外になんと言い表せないのだ。
涙で顔がぐちゃぐちゃになるのを耐えながら、爆発の中手錠が外されるのを確認し左手で掴んだものを放さないように能力を使う。
歓声が聞こえた。
解放された事により皆一つ安堵したのだろう。
しかしここで泣いてなんかいられない、これからが勝負だった。



「戦えるかルフィ!」

「勿論だ!……ハァ…ハァ!」



強がって見せても体は限界だろう。
インペルダウンでのマゼラン戦から数時間、海軍大将を己だけではないにしろ凌いできたのだ。
もう身体中は悲鳴を上げている筈。
今度はここまで来たのだ。
絶対に、何がなんでも。



「まだ、今はおれが守ろう」



この誓いを違えたりしない。
後は逃げるのみだと、オヤジの最後の船長命令を頭に叩き込む。
さぁチャンスは一回。
アイツが、ここで声を掛けてからが俺にとっての本当の勝負。



「白ひげは所詮、先の時代の敗北者じゃけェ…!」



そら来た大将赤犬のお出ましだ。
何回聞いてもカチンと来る台詞に、攻撃に耐える。
まだだ耐えろ、今はまだ気ではない。
あと、少し……



「貴様ら兄弟だけは絶対に逃がさん!よう見ちょれ…」



もう、嫌だった。
これで17回目。
とうとう弟が生まれ、生きた年数と同じ分だけの運命が繰り返された。
ある時はインペルダウン、俺の牢獄の前で。
ある時は処刑台に駆け寄るところを、目の前で。
ある時は共に退却中、俺を庇って目の前で。
そして無事逃げ仰せてオヤジの最後の言葉を聞けたとしても、結局この場面、大将赤犬に邪魔される。
何度も何度も何度も何度も、弟は俺の前で最後を迎えた。
そして弟は自分に言うのだ。
あの幼い頃と寸分変わらぬ笑顔で、今生の別れのとは思えない言葉を。
そして兄不幸者な弟は、何度も何度も兄の言葉を無視して旅立っていく。
一度も言わせてくれない、聞いてくれない。
そんなの、もう嫌だった。
悔いのない生き方をしたいだなんて偉そうなこと言って、結局自分は一度も悔いのない生き方をしたことがなかった。
それも一番大事な相手を守れないだなんて、約束を破ったまま終わらせる人生なんて、弟にあんな顔をさせる人生なんて、もうこれで最後にしたかった。
早く早く早く、身体が壊れたっていい。
もう二度とない人生だと思ったあの頃のように。
集中しろ集中しろ!
何度も言い聞かせた筈なのに、ほんの少し身体が遅れた。
手を伸ばして渾身の力で飛び出したのに、また、届かない。
嫌だイヤだいやだ!
まるで子供が駄々をこねるような気持ちが沸き起こる。



「おい!待て!!」



ほんの少しでいい、身体が前に出てくれれば弟を、自分にとっての唯一を守ることができる。
声を張り上げながら、柄にもなく神なんてものにまで祈った。



「……っ!?」



思わずもうダメだと目を瞑った時だった。
誰かが背中を押してくれたような感覚に陥る。
いや、実際押されていたのだろうか。
ぐっと前に押し出され、遅れを取り戻した身体が弟と赤犬の間に滑り込む。
膝をついた弟の顔を初めて正面から見た。
怖かったな、もう大丈夫兄ちゃんがいるから。
お前を、守るから。



「え」



何処もかしこも熱かった。
体の中から焦げ付く臭いに目も開けられない。
ジリジリと内臓が形を無くしていく感覚がわかる。
息なんて、出来そうにない。
ボタボタと口から吐き出される血が、弟にかからないか心配になった。
こんな激しい痛みの中でもそんな事考えてる自分に笑みすら溢れそうになる。
ぐらりと揺らいだ体が倒れた先に、呆然とする弟がいた。
本当は抱き締めてやりたいが、今はそんな力さえでない。
それでも肌から伝わる温もりと、耳に聞こえる呼吸に何とか腕を回してやる。
良かった……今度は、生きてる。



「ゴフッ」



苦しい……こんな苦しい思いを自分は何度もあじあわせた、そんな中でも笑顔で果てていった弟を思うとやりきれなかった。
出来の悪い弟だから心配だ、なんて口癖のように言っていたが寧ろ出来の悪いのは兄である自分の方ではないか。



「エー…ス……」



掠れた声に笑みを返す。
大丈夫、これでお前は助かる。
今まで自分の力不足で終わらせてしまった命の分、これから夢を叶えて幸せになる権利が弟にはある。
弟自身に自覚は無くともこうして何度もこの場面を見てきた自分には、やっと罪を償い切れたような感覚だった。
さぁ……これでやっとお前に伝えたかった言葉をおくれるよ。
しっかり聞いてくれ。
17回目の、告白だ。



「ありがとう……」



ここにいる全員に、伝えたい言葉。
感謝を伝える言葉ってこれしか思い浮かばなかったんだ。
たった5文字、それだけに全てを詰め込むにはなんて短いのだろうと思ったけれど。



「…ルフィ」



近くで見たらボロボロじゃねえか。
全く昔から心配ばっかりさせやがって。
過保護過保護ってよく言われるが、それは弟が誰よりも危なっかしいのだから仕方がないではないか。



「ありがとう」



いいか、兄ちゃんからの最後の言葉だ。
耳かっぽじってよーく聞いとけ。



「愛してくれて……ありがとう」



お前がいたから知ったことだ。
人に愛されること、人を愛すること。
当たり前で大事なことを沢山教えてもらったよ。
なぁ、俺の言葉、お前にちゃんと届いてるか?























ありがとう、

ありがとう、

ありがとう、

愛してくれて、

ありがとう、

そして。



『ずっとお前だけを愛していたよ。』











願ったモノは結局なんだったのか
(もう一度お前の笑顔を見たいと望んだ。もう一度お前に夢を叶えて欲しいと望んだ。もう二度とお前を失いたくないと望んだ)












独りよがり?
ただのエゴ?
まぁなんとでも言ってくれや。




END











管理人の妄想がたくさん盛り込まれた結果の捏造もはなはだしいお話失礼いたしました。
エースの背中を押してくれたのは、きっと……。
実はこれ、前に書きました「全てが終わり、巻き戻しが始まる」に繋がります。
もう少しに挟みますが、なんとなく続いちゃった捏造妄想転生パロお付き合い頂ける方いましたら宜しくお願いします。
色んなものが、なんとなくフィーリングで伝わっていたらいいな!と思うこの頃←



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