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幸福の葬列


レイルで特殊パロ。
少しだけ、シャンエーか、も?と思われる描写有。

簡単な用語説明
ネコ→人に飼われる人
ブリーダー→ネコを躾ける人、また販売する人










朝の早い時間に目を覚ますのは日課というか習慣になりつつある。
まぁ歳のせいかもしれないが。
まだまだ若いなんていうつもりはないが、老いたと言われれば少々傷つく。
眼鏡をかけるのはオシャレだと言ってみた所で、誰もが老眼だと思うのだろう。
それは構わない。
無駄に歳月を過ごしたわけではないし、今まさに謳歌している最中なのだから気にはならない。



「おや、また入り込んだな」



布団にこんもりとした膨らみを見つけ、思わず頬が緩んだ。
長年続けていたブリーダーも、昨年引退して知人に引き継いだ時最後まで売らずに残したネコ。
老後共にのんびり過ごすため側に置いたネコは、屋敷で自由に飼っているがよく飼い主に懐いた。
どこに行くにもついて来る、視線を下げれば足元にちんまりと座っている。
まるで忠ネコですと言わんばかりにこちらを見上げるので、ついつい抱き上げて甘やかしてしまうのだ。



「仕方がない子だ」



まだぐっすり夢の中なネコの頭を優しく撫でると、気持ち良さそうに首を伸ばした。
首輪を嫌がったため、ネコの後ろ脚の右に足輪を付けた。
動けばわかるように鈴もつけてある。
チリリンと鳴るときは、決まって甘えて擦り寄る時くらいだ。



「失礼致します。旦那様、お客様がお見えなのですが」

「なんだ、もう着たのか。わかったすぐに行く」



執事に渡されたガウンを羽織り、ラフな姿で客人の元へ向かった。
一応名のある貴族故、客人が王族でない限り多少の着崩しを咎める者はいない。
それに今訪れた客人は前々から連絡のあった古い友人だ。
これくらい大したことはない。



「待たせたね、シャンクス」

「お久しぶりです、レイリーさん」



久々に会うこの男は、ブリーダーとして自分の後を継いだ男だ。
礼儀正しくスーツなんて珍しいものを着て訪れたシャンクスに、レイリーは首を傾げる。



「どうしたんだ今日は。また随分珍しい格好だな」

「はぁ、実は午後からマリージョアに行くんですよ」

「王族か。確か去年ネコを連れていったな」

「それを気に入ったらしくて、あと二、三匹欲しいらしいんです」



やれやれと言わんばかりに肩を竦めたシャンクスは、用意させていた紅茶を口に含んだ。
二、三匹欲しいと簡単に言うが、躾の時間を考えるとそうそう簡単に数匹手放せないのがブリーダーの本音だ。
しかし王族からの直々の申し出、断るわけにはいかないとシャンクスは溜息を吐くばかりだ。



「なんだ、君ならすぐに躾も終わるだろう」

「それがどうにもうまくいかないネコがいまして。最近はそいつに専念するせいで他の子まで手が回らないんです」

「ほう、それは困ったものだな。して、その困ったネコというのはあの隅にいる子かな?」



一応基本的な躾はしてあるのか、首輪だけでリードはせず放し飼いになっている。
こちらに敵意むき出しで睨む黒ネコは、しかし何やら落ち着かないのか辺りを見回していた。
見慣れない場所にいきなり連れて来られたのと、突然現れたブリーダー以外の人間の気になるのだろう。



「血統もいいし、顔もいいんですけどね」

「なかなか難しい子なわけか」



と、そこでチリリンと鈴の音が耳に入った。
どうやら目が覚めた時に側にいなかった自分を探して、部屋の前まで来たようだ。



「入っておいで」



許可を与えると、そっと扉の隙間から顔を覗かせ、キョロキョロと見回してからこちらに走り寄ってきた。
寝起きですぐ駆け出したのか、ネコの毛並みはくしゃくしゃだった。
それを直しながら、そっと抱き上げる。



「やっぱりレイリーさんの躾は凄いですね。それでいて貴方にとても懐いている」

「この子は初めから売る気がなかったからね。少々甘ったれになってしまってはいるが、他の子と変わらない躾はしている」



行儀良く膝の上に座り、遠慮気味に甘える姿は誰が見ても可愛らしいと感じる。
どこに出しても恥ずかしくないよう育ててきた、実は一番自慢のネコだ。
そんなネコに向け、シャンクスもやんわりと笑みを向ける。



「久しぶりだ。いつ見ても可愛いなぁ」



優しく話しかけるシャンクスを一度見つめてから、問うような視線をネコはこちらに向けた。
それに頷いてやると、ネコはひらりと降り立ちシャンクスの前にちょこんと座り込み求めるように見上げる。



「こんにちは、ルフィ」



よしよしと頭を撫でられ嬉しそうな顔をしたルフィは、そのままひょいとシャンクスの膝の上に乗り上げた。
すんすんと臭いを嗅ぎ、じっと顔を見つめる。



「ルフィ?」



教えていた挨拶をせず、初めて見せた行為に思わず声をかけると、ぱっと離れ逃げるようにこちらに戻って来る。
すぐにレイリーの膝に乗り上げたルフィは、伺うようにしてシャンクスを見つめるばかりだ。



「どうしたルフィ、もしかして俺の事忘れちまったか?」

「シャンクス、オレのシらないニオイがする」



チリリンと鈴を鳴らして顔を隠したルフィは少し震えていた。



「匂い……あぁ、あの子の匂いじゃないか?」



部屋の隅で驚いた表情で固まっている黒ネコを指差すと、シャンクスはあぁそうだったと思い出した様な顔をした。



「あー……今朝方までエースの躾してたからかもしれないですね」

「シらないニオイは、ちょっとだけコワイ」



ルフィはそう言って黒ネコ、エースを盗み見た。
エースもじっとルフィを見つめている。



「ルフィ、知らないならこれから知り合えばいい。挨拶しておいで」



ぎゅっとしがみつく身体を少し無理に離し、ルフィの背中を押すとびくびくと震えつつもエースの元へ向かう。
ネコは何匹も見ていただろうが、初めてのネコに警戒心剥き出しなエースはじりじりと後ずさりをした。
が、そこは部屋の隅でありこれ以上逃げ場がない。



「オレ、ルフィ」

「…………」

「レイリーのネコなんだ。よろしくな」



何も答えず睨みつけるエースに、ルフィは躾られた通りの挨拶をした。
鼻先をちょんと合わせ、頬をチロリと舐める。
それにビクリと身体を震わせたエースはじっとまたルフィを見つめた。
しかし視線はすぐに足元に逸らされてしまう。



「ほらエース、お前もちゃんと挨拶しろよ」

「……エース」



シャンクスからの声にしぶしぶといった風にエースは名乗る。
しかし尚も視線が下がり、更に俯いてしまったエースにシャンクスは困った様に苦笑をした。



「まぁご覧の通り大体の躾は済んだんですが、肝心な躾があまり」

「なるほど」



まだエースは生まれて二週間らしいが、シャンクスの腕を考えると少々躾期間が長い。
ルフィが一生懸命気を引こうと前足を舐めるが、それに対しビクビクと震えエースはとうとう背中を向けてしまった。



「これはなかなか」

「そこで相談なんですがレイリーさん、エースを暫く預かってもらいたいんです」

「私はブリーダーを辞めて一年だ。もう躾はできんよ」

「直接の躾は俺が何度かしてあります。なので、こいつにネコを見せてやってほしいんです」

「ネコを、かね」



それはつまり、ルフィをということか。
視線をルフィに向けると、まだなんとかエースの気を引こうとしている姿が見受けられる。



「ルフィ、こちらに来なさい」



チリリン、鈴が鳴るとひらりと膝に乗るルフィは何かを求めるように見上げて来る。
ちゃんと言われた通りの事が出来たご褒美が欲しいのだろう。
その期待に応えるように唇を寄せれば、嬉しそうに吸い付く。
呼吸の合間にぺろぺろと可愛らしく何度も舐める舌を軽く吸うと、うっとりとした瞳は自分だけを写しだす。
あぁ、やはりこの子は最高傑作のネコだ。



「いいだろう。一週間、その間だけ預かろう」

「ありがとうございます、レイリーさん!」



嬉しそうなシャンクスの後ろには、こちらの様子をこっそり盗み見ては背を向けまた視線を投げるを繰り返すエースが見えた。
あの様子だと恐らく三日、いや二日で終わるかも知れない。
まぁエースがじっと見つめているのは、くたりともたれ掛かり甘い息を漏らすルフィなのだが。
シャンクスが望むルフィのようなメスネコにはならないかもしれないが、自分にはとっては面白いオスネコになるだろう。



「一週間後、またこの時間に迎えに来てくれ」



きっと、彼も素晴らしいネコになっているだろうから。















幸福の葬列

(さぁさぁ最後尾はこちらだよ)





end

補足用語説明
オスネコ→要はタチ
メスネコ→要はネコ

レイリーさんはオトコノコ専門ブリーダーでした。
オンナノコだとどっちでもネコという表記で分類はありません。
ちなみにブリーダーがどこでネコを見つけるのかは企業秘密です。
…などなど色々自分設定が駆け巡っております。
レイルの躾シーン(エース視姦)とか、エール(レイリー視姦)とか、色々夢が広がっています私ワールド万歳妄想万歳。
とりあえず今回はここまでで。
ご希望があれば続きとかもちゃもちゃ書こうかななんて思ってますが、きっとないので勝手に書くかもしれません←


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