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たとえばキスをして恋をして、


現パロでエール。



最初は、生活リズムのズレから始まった。
朝練で早くから学校に向かう弟と、正直出席しようがしまいが関係ない講義に出る自分。
部活が遅くまである弟と、日の高いうちにもう帰宅している自分。
疲れているし明日も早いためすぐ就寝する弟と、午前様になるまでのバイトに出かける自分。
正直共に過ごす時間は朝晩の食事の時くらいだった。
次に、メールでのやり取り。
あまり時間が共有出来ないからせめてそれくらいは、と欠かさずにしていた。
筈だった。
日に日に返信速度は緩やかになって、今までの一日では数え切れない送信数が、最近ではその日に返ればいい方だ。
授業中だったからなど考えれば今までが異常だったのかもしれないが、弟も自分も基本は睡眠学習だ。
最後に、日常の会話。
朝晩の短い時間でのコミュニケーションは何よりも至福だった。
たわいもない会話をしては笑い合ったり口論になったり。
互いが互いの時間を共有している気分だったのだ。
それが今では会話の糸口が見付からず、ただ淡々と食事をするだけになっていた。
この間も久方ぶりに弟が学校での話をしてくれたのに、会話で出た名前が自分の知らないものばかりで適当な相槌しか出来なかった。

いつからだろうか。
弟の顔を見るために早起きしていた自分がいなくなった。
弟からのメールの返信に悩み、面倒だと思う自分が現れた。
弟とのささやかな時間の共有が、息苦しい義務的なものになった。

あんなに好きだったのに。
男だとか弟だとか投げ捨てて、お前が好きだと抱きしめたのに。
今はそんな気持ち、どこかへ行ってしまった。
日々の生活に追われている、とまで苦しい経済状況ではない。
毎日が充実しているかと問われれば、それは否だ。

しかし果たしてそうだと断言できるだろうか。
あの頃は弟がいないと毎日がつまらなくて、渇いた世界だと思っていた。
でも今は、弟がいない毎日が当たり前で、それが日常になっていて。
世界は沢山の色で溢れている。
今では弟が中心で、自分の世界は回らなくなっていた。




















と、ピタリと夕食を作る手を止めた。
そんな風な日常が、これからの自分達に訪れるのだろうか。
今まで脳内で繰り広げた妄想シミュレーションから抜け出してエースはルフィを視線で探した。
リビングでテレビを見て笑う横顔に思わずほっと息を吐く。
そうだ、そんな未来やって来る筈はない。
だって自分で言うのもあれだがラブラブだし。
何よりルフィが好きな気持ちは尽きることなく溢れ出ているのだ。



「ルフィ!」

「んぁ?なんだエース!」



飯出来たのか?という言葉を遮る様にして弟を抱きしめる。



「ルフィ、俺はお前がどんなに朝練で早く出てもいってらっしゃいのキスして見送るし毎日メールも欠かさないし愛情たっぷりな晩飯用意して待ってるしおかえりなさいのキスだって欠かさないしそれでも会える時間が足りなくなったら俺バイト辞める」



弟がいるから自分がいる、この摂理は誰にも覆させたりしないのだ!



「俺は、ルフィを一生愛してるから!」



この宣言を嘘になんかさせない。












たとえばキスをして恋をして、

(あの頃のように。)











(……エース)
(なんだ!)
(俺もずっとエースが好きだぞ)
(ルフィっ)
(ただ。)
(ただ!?)
(俺もう社会人だから朝練ないし、エースだって仕事してるからバイトしないだろ?つか同じ職場だから朝昼晩いつも一緒じゃん!)
(……はっ!?そうだった!!)







*****


所謂エースさんの妄想ってかドラマの見過ぎオチ?な感じで。
いい兄さんの日、の予定だったのにまったく関係ない話になってしまいましたorz
本当はシリアスで終わる予定だった産物。


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