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薄暗い闇を孕んで、僕は深い闇に消えた


『甘く優しい君の呼吸にキスを一つ』の続きです。
そちらを読んで大丈夫だった方のみどうぞ。















ゆらゆら心地好い揺れに身を任せ、睡眠を貪った。
ふわふわしたこの柔らかい羽毛並みが好きで、小さい頃は良く昼寝をねだった。
ちりちり燃えているように見える体は、触れても熱を感じさせない。
ただ温かな温もりと、優しさだけが伝わるのだ。
他にも祖父から隠れるためによくこの羽に埋もれた。
すっぽりと収まった身体は誰にも見つからない。
まぁ結局、暫くすると祖父には見つかってしまったが。
気配も消して、式神の匂いに潜り込んだ自分を何故見つけられたのかと祖父に昔問うたことがあった。
理由は愛、孫愛だそうだ。
そんなもんで見つけられるわけないじゃないかと思っていた。
でもあながちそれは間違いないのでは、とも思い始めている。
今日だって誰にも見つからないよう分身(わけみ)も置いてきたのに、エースにすぐに見つかってしまった。
サボの能力と自分の能力の未熟さを考えれば致し方ないかもしれないが、それにしてもこうも毎回毎回簡単に見つけられるのは何か理由があるのではないか。
それをエースに話すと、それは愛だと言われた。
また理由は愛だという。
なんだかそうなんだと最近は納得するようにしている。
ではエース達の愛とは何愛だろうか。
自分達の関係は主従、ということは主愛?



「……ィ」



心地好い声にが耳を流れた。
この優しい声は、そう、サボだ。
サボならきっとこの謎を解決出来るに違いない!



「ルフィ」

「…っ……ん、ぁ」

「おはよう、ルフィ。よーく寝れたみたいだね」

「……………」



目を覚ますと、そこには満面の笑みを浮かべたサボが腕を組んで待っていた。
改めてゆっくりと瞬きをする。
そういえばサボが怒っている、と言われたような記憶も。



「さてルフィ、ゆっくり話したい事があるんだけど部屋まで来てくれるかな?」

「うっ……」



笑顔に反した声の低さに思わず柔らかい羽毛を握り締めた。
いつもなら何かとフォローしてくれるエースに付き添ってもらうのだが、残念ながら今はいない。



「マルコに頼ってもダメだからね」

「たまにはきちんと話しを聞けよい」

「…………」



どうやら今夜は長いお説教から逃れられない運命のようだと諦め、マルコの心地好い温もりから離れたルフィは大人しくサボの後に続いた。












■□■□■












焦るように走った身体は人の型を既に無くしている。
風を切る黒くうねる身体は器用に木々を潜り抜け、明かりがぼんやりと点いた屋敷に目にも留まらぬ早さで飛び込んだ。
目指した部屋は屋敷の最も奥深く、目的はそこにいるであろうこの屋敷の主。
部屋にたどり着くまでにいくつものトラップがあったが、全てをかい潜り少し開いた襖の隙間から中を伺う。
月明かりで良く見えた主の顔は穏やかで、安らかに眠っているようだ。
音を立てないように、気配で目が覚めないようにと隙間から入り込みゆっくりと近付く。
ズルズルと引きずる身体を全て部屋へ滑り込ませると、そのまま主を囲うように寄り添った。



「その姿、どれだけ急いで来たんだ?エース」



声に弾かれ目を部屋の奥へと向ける。
金に光る両目により闇の中でもよく見える薄暗いそこには、寝着姿のサボが古座をかいていた。



「心配だった?大丈夫、傷も治療したし、アイツが触れた場所は俺が清めておいたよ。それよりあそこ一体燃やしちゃう方が俺は心配なんだけど?」

「…………」

「残念ながら俺の『眼』からは誰も逃れられないよ、ぜーんぶお見通し」

「……ルフィが起きるぞ」

「今は薬でぐっすり。問題ないよ」



その言葉に息をつき引きずる身体を人へと化えると、サボと同じ様に古座をかきルフィ寝顔を見つめた。
先程まで妖と闘っていた汚れた体のため触れることが出来ないのが口惜しい。
本当ならばきちんと体を清めてからでなくてはルフィに邪気が移ってしまう心配があるのだが、今日は何より早く顔が見たかった。



「アイツ、逃がしちまった」

「まぁ仕方ないさ。俺の『眼』からも逃げ切っちゃったしな」

「まさか!お前から逃げるなんてそんなこと」

「最近この辺りに妖が増えててさ。どうやらその中に紛れ混んだみたいなんだ」



視線を落としてそう話すサボに、信じられないと頭を振る。
サボの『眼』で見えなかったもの、捕らえたものは今までにない。
その視界から、あの夢魔は逃げ切ったというのか。



「急いで探せ。そんで見つけたらすぐ俺に教えろ」

「そんなに焦らなくてもこの屋敷は簡単に見つからないよ。なんせじいさんが貼った結界だぞ?」

「ジジイの結界が外からバレないのはお墨付きだけど、内からバレたら仕方ねぇだろ」



懐から取り出した麦わら帽子を裏返し、中に仕込んだ呪符にそっと指先で触れ霊力を流し込む。
すると一面に文字の書かれた小さく赤い紙は一度チリリと燃え尽きた後、同じ大きさで何も書かれていないが真っ白の紙となり再び元の場所へ戻った。



「ルフィの力が漏れ始めてる。臭いを嗅ぎ付けた妖達がウロウロしてんだよ」

「やっぱり、そうなのか」

「自分でコントロール上手く出来ないのが一番の問題なんだ。まだ雑魚だからいいが、時間の問題だぞ」



重い腰を上げ、襖の隙間から外を伺う。
今宵は望月、月明かりが最も強い日だ。



「タイムリミットは、朔日ってとこかな」

「くそっ!ジジイは十八の誕生日まではもつってたのに」

「俺達もそろそろ準備が必要かな」

「……少し風に当たってくる。サボ、ルフィを頼むぞ」

「ほどほどにね」



サボの声を耳にしながら、もう一度だけルフィの寝顔を視界に納め再び外へ飛び出す。
時間がない、結界が効力を無くす前に己の力も蓄えなけば。



夜に馴染むエースの体は、すぐに闇に溶け込んでいった。

















薄暗い闇を孕んで、僕は深いに消えた




******

というわけで。
皆様のお言葉に甘え続きを書いてしまいました。
しかしなんの進展もない、という……orz
サボ出ましたー彼もルフィの式神です。
また、機会があればぼちぼち書くかもしれません。
その際はもっとキャラをださねばー。
何よりローを仕掛けないといけませんね。
とりあえず、楽しかったですありがとうございました。



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