愛してるが届く距離
現パロでエー→ル。
やまなしおちなしいみなしぃぃぃ…
物心ついたころから、それは自分にとって当たり前の能力としてついて回った。
あの人の後ろに女の人がいるとか、あの人の後ろに子供がいるだとか。
まだ小さい頃はそれが異常だと気が付かず口にしていたため、両親によく注意されたものだ。
その能力は残念ながら両親は持っていなかった。
けれど気味悪がったり、自分をさけようとすることはない理解ある親だった。
中学に入ってから、その能力は自然となくなっていた。
まぁあっても仕方がないものだったので、さして気にも留めていなかった。
小さい頃には少なからずある能力で、大きくなるに連れなくなる人が多いらしい。
ならばこれは来るべき時期だったのだろう。
しかし、自分が社会に出て働くようになってから再びあの能力が備わった。
きっかけはわからない、でも、それは確実に日に日に強くなっていった。
「ロビン先生!今日も遊びに来ちゃった」
「あらナミ、いらっしゃい」
白で統一され清潔感溢れるこの一室が自分の仕事場だった。
滅多に生徒は来ないけれど、その代わり常連となっている生徒はいる。
その一人がこの女生徒だ。
「あら、でもまだ授業中じゃないかしら?」
「大丈夫、実はルフィが怪我しちゃって。遊びに来たって言ったけど本当は付き添いなの」
「まぁ、またルフィは怪我をしたの?」
「ロビーン!」
ナミの後ろでブンブンと元気良く手を振るのは、こちらも常連のルフィだ。
彼はナミとは違い、絶えない怪我のお陰でよくこの部屋へ来る。
そんな二人の椅子を用意し、ルフィを前に座らせて診察を始めた。
視線は向かいに座るルフィへ向けるが、もう一方への意識も忘れない。
「今日はどうしたの?」
「火傷した!」
(躊躇いもせず鍋に腕つっこんだんだ)
「今家庭科の授業だったの。ルフィってば私が目を離した隙につまみ食いしようとして、うっかりお鍋に触ったみたいなの」
(俺が側にいたのに)
「取り敢えず水で冷やしたんだけど、なかなか熱が引かなくて」
(…………)
「……それは困ったわね。じゃあまず火傷した所を見せてもらえるかしら?」
その言葉にルフィは右袖を捲り火傷したと思われる部分を見せる。
肘より少し下、内側の部分が不自然な形で赤く腫れている。
肘に近い部分は拳程度の丸い腫れ、そこから手首に向かうように伸びる5本の赤い跡。
見限り、丸い腫れに一気に熱が加わったのだろう。
恐らくその熱は液体で、重力に従い下へ流れた結果出来たの伸びた赤い跡かと思われる。
しかしこの推測は違うだろう。
この不自然な形、原因は大体わかっていた。
「また大きな火傷をしたわね」
「痛くはねえんだ」
「でもこれは跡になりそうね。ナミ、冷蔵庫から氷を出してそこのボールに水と一緒に入れてくれる?」
「わかったわ」
素直に動くナミを確認してから、改めてルフィに向き合った。
いくつか、確認しておきたいことがあるのだ。
「ルフィ、貴方にはお兄さんがいたわね?」
「おぅ」
「お兄さんは、顔に雀斑があって黒いくせ毛かしら?」
「サボは雀斑ないし髪は黒くねえよ」
「お兄さんはサボだけかしら?」
「おう」
ゆらり、動いた影がルフィを後ろから抱きしめる。
しかしルフィがそれに気づくことはない。
影からはじっとこちらを見つめるかのような視線を感じ、影はぼんやりと形を成し腕に触れ赤く腫れた跡を覆い隠す。
まるで型を嵌めたかの様にぴったりと跡と一致した影に、ロビンは眉を寄せた。
「先生、用意出来たわ」
「ありがとう、ナミ。ルフィ、取り合えずもう一度冷やしてみましょうか」
「わかった」
ボールの中へ腕を浸そうとしたとき、触れていた影が離れた。
そこにはもう跡は残っていない。
「あれ?」
「消えてる……?」
(ごめんな……)
聞こえることのない言葉を放ち、寄り添う影はルフィから離れる様子はない。
そしてその影にルフィもナミも気が付くことはない。
(本当はこんなつもりじゃなかったんだ)
「熱は引いたみたいね。でも心配だから薬だけでも塗っていくといいわ」
(ただお前を、守りたかったんだ)
「あと、念のために包帯も」
(愛してる……ルフィ)
小さく囁く音は自分にしか聞こえない。
いくら影が側にいても、ルフィに触れることは出来ないし話も出来ない。
影は、もうこの世にはいないものなのだから。
それでも影はルフィに憑き続ける。
自分が影を見たのはルフィがこの高校に入学した時からだが、少なくとももっと前から憑いていただろうと感じる。
影がルフィに執着する理由ははっきりとはわからない。
だが、危害を加える様子もないので放って置いたが今回の火傷事件は影が原因なのは明白だった。
そうなるとこちらも見て見ぬ振りは出来ない。
「もうやめなさい」
少しだけ低くし、影にのみ聞こえる声を向ける。
しかし影はルフィしか目に入っていなかった。
ゆらゆらと揺らぐ影が少しずつはっきりと人の型を成してゆく。
(ルフィ、ルフィ……)
「ここは貴方の場所ではないわ」
(愛してる、愛してるんだ)
「彼は貴方の求めているルフィじゃないの」
(俺がずっと守らなくちゃいけないんだ)
聞こえないのか聞く気がないのか、影は更に色を濃くしルフィを包み込む。
まずい、と思った時はもう遅かった。
「ルフィ!?」
突然倒れ込んだルフィを支えると、肌に感じるのはジリジリとした熱。
なんとかルフィをベッドに運び寝かせてから腕を見ると、まるで火傷をしたかのように腫れていた。
急いで先程の氷水で冷やし、熱が引くのを待つ。
ナミがそれを心配そうに見つめていた。
「先生……」
「大丈夫、なんでもないわ」
「でも」
「ナミ、貴女は授業に戻りなさい。後は先生が」
「……はい」
まだ何か言いたげな表情のままだったが、ナミは部屋を出ていく。
足音が遠ざかり授業に戻ったのを確認してから、再びルフィへ視線を戻した。
人の型を完全に成した影は、ベッドに眠るルフィを優しい眼差しで見つめていた。
触れることは叶わないが、何度も撫でる様に手が頬をなぞる。
「何故ここにいるの?」
(ルフィを守らなくちゃいけない)
「ここにはルフィを傷付けるものはないわ」
(ある、たくさん。あの頃よりもずっと)
「ないわ、ないのよ。だから貴方はもう眠っていいの」
(たくさんの人間が、ルフィを傷付ける。少しずつ少しずつルフィの心を砕いていく。だから守らなくちゃいけない。俺が、守らなくちゃいけないんだ。誓ったんだ、あの時。俺は死んでもルフィを守る、ルフィの幸せを守る)
「このルフィは貴方を知らないわ」
(知ってる、ルフィは知っている。心の片隅に俺をわかってる。だってあのままだ、あの時のままルフィは……)
はらはらと、まるで涙を流すように影は足元から消えていった。
影がいた場所は、まるでそこに誰か立っているかのような影の形で黒く焦げていた。
白い部屋に浮かび上がるその黒は異様で、まだそこに影がいるのではないかと思わせる。
「そうやって貴方はずっとルフィを縛り続けるのね……エース」
愛してるが届く距離
(お前の幸せが末永く続くことを望む)
END
えっとですね、説明します(汗)
エースは海賊時代のあの時のまま、結局悔いを残して成仏できずにルフィに憑いてました。
で、そのあとルフィが何度生まれ変わっても魂に憑いて回って現在にいたってます。
でもルフィには前世の記憶?はありませんし、そういったものを見る能力はないのでエースに全く気が付きません。
一方ロビンちゃんは霊感があって、そういったものを見てきました。
お話とか出来たりしてます。
でも除霊とかそういった能力はないのでお話し合いで何とか去っていただこうと頑張ります。
そんな中でルフィとエースに会うわけですね。
ロビンがエースの名前を知っていたのは力により過去を見たためからか、それとも前世の記憶があったからなのか、は皆様の解釈ということで。
ここまで説明したのにもかかわらずなんのオチもないお話ですみません。
エースにルフィの背後霊になっていただきたかったんです(ぇ)