もう少し、なんて言えなくて
キドルで学パロ。
一緒に帰ろう。
そう初めに約束したのはずっと昔、そう小学生の頃。
でもなんだかんだで高校に入っても一緒に帰ったのは、多分離れたくないとお互い思ったからだといいなんて思う。
「キッド、一緒に帰ろう!」
ルフィのその言葉を聞くたびに、なんだか胸の辺りが暖かくなるのは気のせいじゃないと思う。
クラスも代わってあまり会うことがなくなって。
近所に住んでるのに相手は部活が忙しくて全く会えない。
帰りも遅いから自然と別々かと思っていたが、なんだかんだで遅くまで残っている自分がいた。
別にやることもないのでもっぱら屋上で昼寝なのだが、アイツは毎日迎えに来る。
そして笑顔で帰ろうと言うのだ。
昔みたいに手を繋いだりはしない。
恥ずかしいからやめようと自分から言い出した。
それも、ルフィはあまり聞いてくれなかったが。
「それでな、今日はウソップが……」
帰り道にもっぱら話しをするのはルフィの役目だった。
自分はそうか、とかへぇ、だとか相槌を打つのみ。
だって話しを聞いている方が楽しいし、ルフィが楽しそうにしているのが見れれば構わなかったのだ。
だから自然と成り立ったこの関係に、不満なんてなかった。
「あ」
まだまだ話し足りない様子のルフィだったが、とうとう自分達の家が見える距離まで来てしまった。
少し残念そうな声と、下がる眉尻にここは一つ俺が言わなければと思う。
乾ききって声を出すのも辛いのだが、今はそんな事を言っていられない。
「……あ、のよ」
「ん?」
「駅前で、うまいクレープがあ」
「食う!!」
いきなりキラキラ輝いた瞳は俺の手を突然掴む。
嬉しそうに笑う顔に、言ってみて良かったと思った。
カラカラに乾いた喉も今では声を絞り出そうと必死だ。
「いまさら……だけどよ」
「いい!食べに行こう」
「じゃあ、戻るか」
「おう!」
久しぶりに繋いだ手は昔より大きくなっていた。
でも指は細くて頼りなくて、自分の手の方がずっと大きくて。
じっと見つめていたら、俺が嫌だと思っていると勘違いしたルフィがパッと手を離そうとする。
「キッド……?」
それがなんだかとても嫌で。
でもそれが伝えられなくて。
ただその手を握り返したら。
嬉しそうに笑ってくれた。
もう少し、なんて言えなくて
(恥ずかしさで、顔が燃えるかと思った)
END
キッドは強引なところもあるけど、臆病さん。
プラトニック恋愛なキドルが悶えるくらい好き。
きっとエースが家からものすごい形相で見ていることでしょう。