「蒼空姉、早く早くっ」
夏祭り、人混みの中
フゥ太は小さな手で
私の腕をしっかりと握りながら
走り抜けてゆく
向かった場所は
階段を登りきった小さな神社
「ここ…?」
「うん! そうだよ
僕のランキングによると
花火を見るのに
一番良いスポットなんだぁ」
息を切らせて
ちっちゃく笑うフゥ太
「蒼空姉、」
…………。
何かを言いかけていたのに
花火の音が重なり合って
私には届かなかった
「ありがとう…フゥ太
好き、だよ?」
私は10年後のフゥ太を知ってる
だから、ドキドキが止まらなくて
花火の音に紛れてそっと呟く
「蒼空姉、僕蒼空姉の事好きだよ」
私の声は聞こえなかったはずなのに
フゥ太からの言葉は
私の想いが伝わってしまったような
そんな言葉だった
年が離れていても、本気の恋
触れるだけのキスは
花火だけが照らしていた
ちっちゃいフゥ太