謙也くんが変だ。 朝から何となく違和感を感じていたけれど、これはおかしい。 屋上で2人で食べるお弁当、いつもなら嬉々としてお弁当を広げて掻っ込むように食べているのに。今日はやけに箸の進みが遅い。そういえば何か朝からぼんやりしてたかも知れない。 「謙也くん、ちょっと失礼」 わたしが彼の額にぺたりと手を当てると、謙也くんは箸を咥えたままぽやんとこちらを見た。触れた手からじんわりと熱が伝わる。…うわ、熱くない?これ。 「ねえ、熱あるんやないの?謙也くん」 「んー?そないなことないと思うけど」 「だめ、念のため保健室行くで」 はい、急遽楽しい弁当タイム終了。わたしはスピードスターと称されていることを疑いたくなるようなスピードで弁当を片付ける謙也くんの熱い手を握って階段を駆け降りた。それこそスピードスターと呼ばれそうな速さで(自称)。 カラカラと保健室の扉を開くと、今日の当番らしい白石くんが居た。白石くんも弁当の途中だったらしいが、わたし達の来訪に気付くと、にっこり笑ってくれた。 「おー名字さん。と、謙也?どないしたん?」 「いや、どうもしとらんけど名前がー」 「ごめん白石くん、体温計貸してもらえないかな」 わたしが謙也くんを引っ張ってベッドに座らせながら言うと、白石くんは苦笑しながら体温計を手渡してくれた。 「らしくないなあ謙也。彼女さんにあんま心配かけたらアカンで?」 「心配される要素あらへんし」 体温計を脇に挟みながらそういう謙也くん、めちゃくちゃ顔赤いです。そんなんで熱ないわけないやんか。 「名前ー、体温計ぴぴってなるまで弁当食ってええ?」 「ああ、ごめん。ええよ」 わたしと白石くんは体温計を挟んだまま食べにくそうに弁当を食べる謙也くんを苦笑しながら眺めた。彼が半分くらいそれを胃袋に収めたところで、ぴぴぴっと体温計が計測終了を知らせた。 「うわー37度7分?結構あるやんか」 「ほら言ったじゃん」 「えー、俺熱あったんか…」 「どないする?早退するか?」 「んー…」 ころんとベッドに倒れこんだ謙也くんに、どっちにせよ熱下がっても今日は部活出ささんで、と白石くんはカルテみたいなのに色々書きながら聞く。 「ほなら保健室で休んどく」 「?、さよか」 「え?大丈夫なん?」 「おん、よゆー」 謙也くんはもそもそと布団に蹲りながらへらっと笑った。 「部活行かんのやったら名前と一緒に帰れるから」 それを聞いて、わたしも熱が出たのだろうか、頬がぶわっと熱くなるのを感じた。 「イチャイチャするんやったらやっぱ部活来らしたろかな」 先生への連絡を終えた白石くんがため息混じりに言ったが、既に謙也くんは微睡んでいた。 君が気付かないならわたしが気付けばいいか、なんて *** 低クオリティですみません; 謙也くんは人の変化には敏感だけど自分のことには疎そう。 |