作品 | ナノ




たんぽぽは太陽を浴びて黄金に光る
やがてそれは白くて柔らかな羽根を広げる
そして自由に空を駈け、また光を浴びて輝きだす




「っはー!!快晴快晴!!」
「……名字、いったい何の用だ?」
「…………橘くん?!」


青空の下、彼の姿を見た
同じクラスの橘くん
いつもの彼は金色の髪を目一杯風に遊ばせて、大きな口を開けて笑っていた
なのに今日は短い黒い髪でもの寂しげな顔をしていた


「どうしたの?!最近学校来てないと思ったら……その頭イメチェン?」
「あ、まぁ……そんなとこだ。名字こそ……授業中だろ?」
「あと一時間で昼休みだし、早弁しに来た」


そう言えば苦々しい表情をする橘くん
何だろう……元気ないなぁ


「橘くん、体調悪かった?」
「え?」
「千歳くんもなんか眼帯とかしてるし、最近二人ともどうしちゃったの?」


橘くんは返事を返さず落下防止用のフェンスに手を置いて空を眺めた
青い空に、白くて真っすぐな飛行機曇


「名字は……東京から来たんだよな?」
「いきなりどうしたの?」
「答えて、くれないか?」


橘くんの背中、真っ白なシャツに太陽の光が反射して……なんか眩しい
私は橘くんの隣に立って、彼にならってフェンスに手を置いた
飛行機曇は朧気た形になって空に溶けていく
橘くんの顔は……
見ない、見れない……眩しいから


「……うん、いたよ。小学校まで」
「どうだった?」
「楽しかったよ。遊ぶ所もコンビニも友達も多くて……でもここの方が好き」


フェンスがカシャリと揺れた
チャイムが鳴って、グラウンドには真っ白なシャツの軍団が散らばって行く


「のわ?!早弁し損ねた!!」
「ぷっ……」
「あ……橘くん笑った」


反射的に橘くんの方を向けば笑顔の橘くんと目が合った


「…………聞いてもいいか?」
「私に答えられる範囲でなら」
「それでいい。名字は何で熊本がいいんだ?」
「いや、熊本限定って訳じゃないよ?確かにすごくいい所だけど……私は橘くんといるこの屋上が一番好き。もっと言えば橘くん大好き」
「ぶっ!!」


橘くんは口に手を当てて笑いを堪えていた

…………橘くん、これが私の告白って気付いてるのかな?
私が本当は橘くんの転校を知ってること、気付いてるのかな?
橘くんにとってはお馬鹿なクラスメイトだけど、誰より君の側にいたいって気付いてるのかな?


「俺も名字、嫌いじゃないぞ」


でも、きっと……この距離でいい
高望みして傷つくより……

「だから、お前といつまでも繋がっていたいと思っている。携帯番号教えてくれないか?」


…………前言撤回
やっぱり橘くんの近くがいい


「もっちろん!!」


君が綿毛になって飛んでいっても
君の花は風に乗ってまたどこかで咲く
だから私はいつだって、どこにいたって、君の綿毛を追い掛けるよ




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