イヤホンガンガンゲーム


「みんなちゃんと携帯とイヤホン持ってきた?!」

いつも通りノリノリの及川。

「おう」

「あるよ〜」

「持ってきた」

「私も持ってきたよ」

だんだんつっこみを忘れて今日は何かと楽しむようになった岩泉、花巻、松川、私。

そして、

「……帰っていいですか?」

何故か今週のゲスト(及川が言ってた)として我が部の国見ちゃんが部室にはいる。

「え、国見ちゃん帰っちゃうの?」

「みょうじは国見のこと好きだよネ〜」

「ちょっと国見ちゃん!せっかく及川さんが誘ってあげたのに帰るとか言い出すってなんなのさ!」

及川の話によると、月曜日ということで部室に向かおうとしてると帰ろうとする国見ちゃんにエンカウントしたらしい。
金田一は?と聞くとあいつは居残りですとかなんとか言われ、だったら金田一を待つついでに俺たちにちょっと付き合ってよ!と。

「国見、ちょっとだけだから付き合ってよ」

「………」

松川に言われしぶしぶその場に座る国見ちゃん。

私は今、珍しくナイスプレー及川と褒めてやりたい。花巻にも言われたように私は国見ちゃんを推している。推しメンは誰かと言われたら間髪入れずに国見英と答える。

及川は座る国見ちゃんを確認すると、じゃあ揃ったから説明するね〜と、今日やることを話し始めた。

「今日は、『イヤホンガンガンゲーム』をしたいと思いまーす!!」

「あ、私それ知ってる。友達も部活のメンバーとやってて楽しそうだと思ってたんだよね〜」

「あ?何だそれ」

「最近流行ってるやつデショ?音量大きくした音楽をイヤホンで聴きながら伝言ゲームするやつ」

「そうそう、次の人に伝言したらイヤホンはずしていいんだよー」

「………先輩たちって毎週こんなくだらないことやってるんですか?受験生ですよね?暇なんですか?くだらなくないですか?」

「俺も花巻も岩泉もみょうじも、最初は及川の悪ノリに呆れてたんだけどな。回数重ねるうちに楽しくなっちゃったわけよ」

「くだらないですね」





さっそく及川の言う通りにみんなで配置につく。及川がお題を出すようで、及川、国見ちゃん、花巻、岩泉、松川、私の順で並んで座った。

「はーい、じゃあみんな。イヤホンつけて音楽かけて〜」

携帯の画面の再生ボタンを押し、徐々に音量を上げていく。あーうるさいかも……。どうしていきなり大きい音で再生しなかったというと、さっき言ったゲーム経験者の友達がいきなり大きい音で聞くと、

「ウルッッッセェ!!!!!!!!!」

「岩ちゃんちょっと落ち着いて?!びっくりしたからって俺に殴りかかろうとしないで?!?!」

………こうなるからだ。『いきなり大きい音で聞くと鼓膜が破れるかと思って暴れそうになる』、友達の助言が頭の中で反芻した。


始めるよー!!と、及川が言っている。気がする。聞こえないけど口の動きとジェスチャーでわかった。


〜及川から国見の場合〜

「国見ちゃんいくよー!!『及川さんのことが、とても好きです』!!!」

「はい?」

「おいかわさんの、ことが、とても、すき、です!!!」

「…………」


〜国見から花巻の場合〜

「及川さんのオーラ、とても、うざいです」

「えっなに?もっかい」

「ちょっと国見ちゃん?!?!気持ちはわかるけど全然違うから?!?!?!」

「及川さんの、オーラ、とても、うざい、です」

「わかんねえ……、もっかい!!」

「及川さんのオーラ、とてもうざいです」

「それ国見ちゃんが普段思ってることじゃないよね?大丈夫だよね?」


〜花巻から岩泉の場合〜

「おい朝シャンの音だ、オレオくさいです」

「……あ?全然聞こえねーぞ」

「全然伝わってなかったんですね、俺の伝言」

「それ同じこと及川さんも言っていい?」

「おい朝シャンの音だ!オレオくさい!です!」

「だいたいしかわかんねぇ」

「花巻さんってシュークリーム以外の甘い物は敵だと思ってるんですかね」

「そういうことじゃないと思うよ」


〜岩泉から松川の場合〜

「及川なんの音だ、それもうざい」

「なんて?」

「あ、すごい。俺の言ってたやつにほとんど戻りましたね」

「国見あんなこと言ってたの?全然違ったじゃん俺」

「及川なんの音だ、それもうざい」

「難しいな……」

「岩ちゃんも国見ちゃんも普段から思ってること言うゲームじゃないからね?俺そんなお題出してないよ?」

「自分で普段からうざいと思われてるって言ってるようなもんですよそれ」


〜松川からみょうじの場合〜

「富か母の事か、どちらか選べ」

「おっけー」

「まっつんただの脅迫じゃない?」

「“及川何の音だ”が“富か母の事か”になるってすげえな。どちらか選べにはどう考えてもならねえと思うけど」

「てかみょうじが一発でおっけーを言ったことに驚きだよネ」

「松川さんに大声で言われるのがただ怖かっただけじゃないですか」



「終了〜〜〜!!」

と、多分だけど及川が言っているのを確認してイヤホンを外す。耳がいたい。絶対これ最後の人の方がつらいよ。

「じゃあなまえちゃん!答えをどーぞ!!」

みんなに注目されながら、私は先ほど松川に言われたであろうセリフを口にだした。

「及川徹のことは、ロシアに飛ばせ」

「は?!?!何それ?!?!」

「みょうじナイスー」

「やるじゃねえかみょうじ」

「俺のは全然伝わってなかったけどね、それは傑作だわ」

「さっさとロシアにでも北極にでも飛ばしちゃいましょう」

「ちょっとみんな?!そもそも俺が最初に言ってたやつ『及川さんのことがとても好きです』なんだけど?!?!」


***
何がしたかったのかわからない。

私もこれ友人とやったんですけど、かなり聞こえないし伝わらないです。


mokuji