祖母家の可愛い犬系男子
今日は私の大好きな五色工くんを紹介したいと思います。
「みょうじさん今日の俺どうでしたか?!牛島さんよりかっこよかったですか?!」
可愛いところその一、練習が終わると、工は自分のその日の練習についての感想をまずは牛島、次に私に駆け寄って聞きに来てくれます。
「すごいよかったよ〜!!」
「ッス!!」
工は前髪を綺麗になびかせて弾けるような笑顔になる。
すごいなぁ、あんなにキレッキレに動くのに何で前髪綺麗なままなんだろう。アイドルでもあそこまでの前髪キープ力はなかなか見ないわ。
「ほんっと、なまえちゃんは工の扱いが上手いよネ〜」
そこに同じく練習を終えた天童が私が渡したドリンク片手に歩み寄ってきた。
「うん、でも本心だもん。今の工のスパイクすごかったじゃん。かっこよかった」
「それを素直に言っちゃうなまえちゃんもすごいけどね……」
ある意味若利くんみたいだよ、とか天童は言ってるけど私と牛島のどこに似ているところがあるのかさっぱりわからない。
私の言葉一つ一つに牛島みたいなあんな重みはないでしょうよ。
「2人を見てるとなんか癒されるよな!!白布!!」
「いや、俺に振らないでくださいよ。別に五色見ても何も思いませんし」
「そういうことじゃねーよ!!みょうじと五色を見てるとキュンキュンするよなって話だよ!!」
「しませんけど」
高3男子が何をキュンキュンとか言ってるんだろうか。そんな瀬見は放っておいて、工の元へもドリンクを持っていく。
「はいこれ、お疲れ〜」
「ありがとうございます、みょうじさんの作るドリンクって何でこんなに美味しいんですかね?!」
可愛いところその二、ドリンクだけでもいちいち褒めてくれます。
ああもうなんてこの子は可愛いんだろう。おばあちゃんちで飼っているトイプードルのような可愛さだと思う。
「みょうじが作るドリンクは美味いのか」
そこに登場我らがエース。私の作ったドリンク片手にそれを不思議な様子で眺めている。
「いやいや若利くん、そういう意味じゃないから」
「??」
「あのね牛島、牛島のには愛情は入ってないから普通なはずだよ。工にだけ愛情たっぷり入れてるから美味しいの」
「なるほど……」
「納得しないで?!?!」
「みょうじさん……!!そんなことまでしてくれてたんですね……!!」
工は目をキラキラと輝かせまた私の元へと駆け寄る。うん、やっぱり犬みたい。可愛い。
「工のためだからね!!私何でもやっちゃうよ!!」
「みょうじさん大好きです!!!」
可愛いところその三、工お得意のスパイクのごとく、愛情表現もどストレートです。
「私も大好きだよ!!」
だから私も自然とどストレートに返します。多分1日に最低5回は大好きって言い合ってると思う。
「瀬見さん、こいつらのどこが癒されるんですか」
そんな私たちをジト目で見ながら白布は呟く。いやこいつらって、こいつらって、私先輩なんですけど。
「微笑ましいだろ?」
「うざいです」
「白布聞こえてるからね!!みょうじ先輩聞こえてるからね!!」
多分白布はなんだかんだ工のことをすごく気にかけているから、私と工が仲良くしていることを嫉妬しているんだと思う。
渡さんぞ、工は渡さんぞ、何があっても。
「白布さん嫉妬はやめてください!」
「してねーよ」
「私も今それ思ってたの……!!」
「本当ですか……?!」
どうやら工も同じことを思っていたらしい。飼い主はペットに似るっていうし、やっぱり工は私の可愛い可愛いワンちゃんで間違いない。
「多分工となまえちゃん同じこと思ってたわけじゃないと思うよ、嫉妬の目的語に齟齬があると思うよ」
「お前は黙ってろ。この2人の世界を崩すなよ」
「英太くんはなに目線なの?!」
「俺はな、2人をな、くっつけるために生きているんだよ……」
「えっ五色とみょうじさんって付き合ってないんですか」
「え、白布、私たちが付き合ってると思ってたの?」
さっきから言っているように私の可愛い可愛い大好きなお犬様枠に工がいるのだ。付き合うなんて、そんな、ねえ。
「英太くんがそんなに頑張らなくてもほっときゃすぐにくっつくでしょ!」
そう言う天童は私と工を磁石か何かだと思っているのだろうか。人を磁石に例えるとかさすがゲス。
「天童、甘いぞ。なあ工、みょうじのことどう思う?」
「そんなの大好きに決まってるじゃないですか!!」
またもや前髪を綺麗になびかせ、その頭を私の方に傾けてくる工。お、そろそろブンブン左右に振られる尻尾が見えてきたぞ。
「ふふ〜、だよね〜知ってる〜」
その頭を私はなでなでする。うわー、相変わらず髪の毛サラッサラだな。キューティクルを感じる。
「ホラ!!もう付き合っている同然じゃん!!」
次はみょうじの番だ、と私に先ほど工に聞いた問いと同じものを聞く。
「工のこと?そりゃあ、可愛いペットの犬だよ」
私の返答を聞くやいなや、天童の顔は絶望と形容するに相応しいであろう表情となった。
「ねー、工〜」
「俺、みょうじさんに頭撫でられるの大好きです!」
「英太くん、こいつらもうダメだ……」
「ほらな、だから言ったろ……」
「誰も気持ち悪いとは思わないんですか?」
「白布くんは私たちに対して失礼だとは思わないんですか?」
まあ向こうがその気になればすぐにでも、私は五色工の彼女になってもいいと思っていますけどね。
「みょうじさんもっと撫でてください……!!」
「よしよしいい子だね〜」
………当分彼は、私のワンちゃんでいる気なようだけど。
mokuji