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「二次試験は、料理よ!!」

……ほう。料理。……ん??料理って料理?!クッキング?!

一次試験が無事に終わり二次試験。どっかの誰かではないが、そろそろ退屈すぎる。次こそはドンパチ暴れたい。そう思っていたのに、なんと試験内容は料理。

仕事柄、色々なことをやってきたので今回の試験でもそこで得た知識が役立つことがあるだろうと思っていたが、料理という料理なんてしたことがない。

ちなみに私の仕事はイルミさんと同業者というわけではない。同じようなこともするけど。
肩書きは“何でも屋”。だから殺しだってするし、逆に護衛とかもある。あとは脱獄の手伝いだとか、本当にありとあらゆることをしてきた。その仕事中にイルミさんとも出会った。

……が、二次試験の内容は料理。これは変わらない。どうしようか。そんな依頼は受けたことない。何も活かせない。

私の中での料理のイメージは、ナイフとフォークを使って美味しゅうございます、みたいな感じ。前に仕事で富豪のパーティーの護衛をした時に見たアレだ。
他にも色々な料理があることは知っているが、やはりそれこそ美食ハンターのことだからそういう豪華なものを求められるのかと思うとハラハラする。
受かりっこないよそんなん!!

悩んでいると、試験官のメンチが口を開く。

「豚の丸焼きよ!!」

私の想像と反し意外にも、誰にでもできるようなお題だった。
獲物は森林内にいる世界一凶暴な豚。どれだけ強いかは知らないけど……。丸焼きってところはもはや私のための内容だと思う。ありがとう。この能力を存分に使う時がきた。

よっしゃやってやるぞと意気込んでいると、後ろからカタカタカタと不気味な音が聞こえる。

「げ……」

振り向くとそこにはこちらを見つめる針人間。口を開かなくてもわかる。私の目をじっと見ているだけでわかる。

――『お前の能力、使えるよね』

イルミさんは、私の能力を知っている。
故に、直感的にそう言われているような気がした私は頷くしかない。
どうせ自分も能力使って焼こうと思ってたし、豚1匹も2匹も変わらない。火力は多少1匹分よりも必要となるが、私の体力的にもオーラ的にも余裕だ。だから頷くんだ。
何より私はイルミさんのこの雰囲気が苦手だ。断ることを許さないこの雰囲気が、苦手だ。






パリパリ、ジリジリ、豚が焼けていく美味しそうな音。
澄ました顔のイルミさんと、全身泥まみれの私。

「本当、お前の能力って役にたつよね」

「……そりゃどうも」

私はてっきり、イルミさんが持ってきた豚に火をつけてやればいいもんかと思っていた。木を組んで火を起こして、とかが面倒だからそれを短縮しようとしていたのかと思っていた。

「ってか、自分の分の豚くらい自分で取ってきてくださいよ!!すっごく疲れたんですけど!!泥だらけだし!!」

そう、情けのかけらもないこの鬼畜人間は、豚を見つけ、仕留めて、焼く、全ての項目を私に丸投げしてきたのだ。

「豚を追っかけるのに夢中で泥沼に気づかなかったのはなまえだろ、俺に責任をなすりつけるのやめなよ」

そう、私は2匹目の豚狩り中に見事に泥沼にドボンしたのだ。おかげで全身が泥、泥、泥。途中見つけた池で体についた泥は落ちたものの、私の服についた頑固な泥の汚れたちは一向に消えてくれない。

最初に仕留めた私の豚ちゃんはいい子だったのに。いや、いい子ではないが比較的楽に捕まえられた。木の上で待ち伏せしてちょうどいいタイミングで、木から飛び降り渾身の右ストレートで一発だった。

そして2匹目を見つけ追いかけっこを繰り返している時、ドボン。悲劇は起こったのだ。

イルミさんがいなければこんなことになるはずじゃなかった。そもそもハンター試験受けなくて済んだ。
元はと言えば私が無理なお願いをしたせいでこうなったのだから、そんなこと言うのは都合が良すぎると思われるかもしれない。しかしどうだ。等価値交換と言える状況だろうかこれは。

って、私たちが二人で固まってちゃキルアくんの見張りにならないと思うんだけど。

「さっさと試験官の所にこいつら持っていきましょうよ。二人でいたらキルアくんの見張りできませんし」

「あーそれなら大丈夫。もう一人キルのことよろしくって言ってある奴いるし」

過保護か。イルミさん含めて3人も用意するとか過保護か。
つっこみつつも、どんな人だろうと気になったので聞いてみる。

「どんな人ですか?」

「44番のヒソカ」

「へぇー、……え?!?!?!」

しれっと私の初耳な驚くべき交友関係を言ってのけるイルミさん。いやそこ知り合いだったんかーい!!
というのは向こうも同じなようで、私と似たような思いをイルミさんは口に出す。

「なに、知り合い?」

「いや、えっと、知り合い、というか……」

同じ蜘蛛の一員でーす。と、言いたい所だが、イルミさんには私が蜘蛛だということを告げていない。別に知られてもいいけど、いうタイミングも必要もなかったからだ。
今ここで、私もヒソカも幻影旅団ですというのは何だか気がひける。そもそもヒソカが蜘蛛であることを知っているのかも定かではないし、色々説明が面倒くさい。

ここは適当にごまかすのがベターだろう。

「まあ、仕事がらああいう変な奴とよく絡むんで」

「ふーん」

はい、聞いてきたくせに興味がないと。了解です。

そうこうしているうちに豚ちゃん達はいい色になってきた。正直そんなに焼き加減はわからないけど。

「じゃ、この子たち運びますよ」

「うん、なまえが2匹とも運ぶんだよ」

……私より面倒くさがりの奴がいるんですね。

mokuji