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「……!!」

近くで突然強い殺気を感じる。幸いにも私に向けられているものではないみたいだ。

面倒だから早くこの場から離れようとすると、思いっきり誰かが殴られたような音と叫び声。

……この声、ゴンくんと一緒にいたあの眼鏡?名前は忘れたけど。
私の推測が正しければ、近くにゴンくんがいる可能性がある。そしてそれはキルアくんがいる可能性も秘めている。

多分、ないけど。ないと思うけど。死なれたら困る。もちろんキルアくんが、だ。他はまあ、死のうが生きようがどうでもいい。
話によれば既に殺し屋として日々精進しているらしいキルアくんだから、よっぽどのことがない限りは……。って思うと同時に、やっぱり心配。あとキルアくんに何かあったら下手すると私にも何かあるかもしれない。主に命の面で。

そこにキルアくんがいるかも定かではないのな、変なところで何だかんだ抱いてしまった使命感と、ついでに命の危険を感じてしまった私は、絶を使いながら先ほど叫び声が聞こえた方へ向かった。





「さ、そろそろキミも出てきなよ」

「感覚気持ち悪っ!!」

思わず悪態をついてしまった。だってお世辞抜きで私の絶は完璧なはずなんですけど。

「覗きかい?それとも、キミもボクに試験監督してもらいたいの?」

「結構です」

私が(完璧な)絶を使い例の方を伺うと、ボロボロの眼鏡の人とゴンくん、そしてヒソカがいた。肝心のキルアくんはおらず、私の無駄足に過ぎなかった。
現在の状況は、今さっきゴンくんが眼鏡を連れて逃げていったところ、です。

はい、私の名誉のためにもう一度言います。私の絶は“完璧な”絶です。ヒソカの感覚が気持ち悪いから気づかれただけです。

「っていうか、それみんなにやってるの?試験監ごっこ」

「適当に選んでね、合格者はまだ少ないけど」

趣味悪。くだらな。何でお前みたいな変態が基準なんだよ。
そうです、苦手な人の悪態ならいくらでもでございます。

「へぇ」

自分でもびっくりの無関心な返事をする。キルアくんの身に何かがなければ私はなんでもいい。あと私の身にも。

「ボク、一回キミとも本気で殺ってみたいんだよ」

ねっとりと舐め回すように私を見つめるヒソカ。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

「勘弁してよ」

「能力を使ってるところ少しみたけど、具現化系?ボクのオーラ別性格分析的に言うと、変化系って感じするんだけど」

いや、なんだよその分析。完全に独断と偏見だと思うんだけど。
とか言いつつも、能力を見た感じの答えよりも意外とその分析とやらの答えの方が正しい。変化系ですけど。でも教えてやるもんか。

「あんたに言う必要はないから」

「つれないなあ」

「そもそも団員同士でしょ、本気で戦うとかそういうのはご法度だから」

ふいっとそっぽを向き、ヒソカの元を去ろうとする。そのまま追いかけられたら面倒だなと思っていたが、見逃してくれるようで、向こうは向こうで他の道へと進んで行った。

最後小さい声で、「団員同士、ねぇ……」、って意味深に言ってたような気がするけど。
一体どういう真意でその言葉を彼が言ったのかはわからない。



え、まって。私ヒソカに能力を見せたことなんてないはずなんだけど!!あいつとはそんなに関わってないし、一緒に行動したこともほとんどない。そもそもあんな気持ち悪い変態に能力を知られたくない。

なぜ、いつ、私の能力を見る機会があったのか。自分の記憶を辿る。


……やらかした。うん、私が悪い。

一次試験の始まる前、飛んできたトランプを、勢いとイライラに任せてそのまま燃やしたんだった。

多分ヒソカは、私が炎を具現化したと予想しているのだろう。残念でしたー。

よく具現化系って勘違いされることが多いけど、私はれっきとした変化系だ。フェイタンと同じです。はい、ここ重要。

ハンター試験が始まってから、私の脳内の3割は“面倒くさい”、2割は“ヒソカに絡まれたくない”、残りの5割、つまり半分は“フェイタンに会いたい”となっております。

流星街生まれ、流星街育ち、生粋の流星街ガールの私は物心ついた時からフェイタンにひっついていた記憶がある。その後、いずれ私たちの団長となるクロロや初期メンバーと出会った。
私の人生の中で、一番最初にしっかりと認識したのはフェイタンであって、家族と言っても過言ではないと自負している。もちろん家族じゃないし、私の彼への愛情は家族愛とかじゃない。いつからかはわからないけど、私のこの気持ちは確実にライクではなくラヴだ。エル オー ヴイ イー のラヴだ。


うん、やっぱり試験が終わったら仕事入れずにフェイに会いに行こう、絶対。


mokuji