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無事に試験が終わったことをシャルナークに伝えると、仕事もひと段落してフェイタンとトキワシティにいるらしい。

指定されたバーに行くと、カウンター席には既に二人の姿があった。

「フェイタン!」

「ちょっとなまえ、俺のことが見えてないとは言わせないよ?」

「ごめんごめん、シャルにも会いたかったよー。色々ありがとうね」

適当にお酒を頼みフェイタンの隣の席へと座る。
ちなみに私がお酒を飲める年齢かどうかは自分でもわからない。気付いた時には飲んでたし。

「お前、ワタシに言うことないか」

「久しぶり。大好き。会いたかった」

「チッ」

そういうことじゃないね、とご機嫌ななめのご様子で。フェイタンは私と久々に会えて嬉しくないのだろうか。

「何でヒソカと一緒にいたのか気になってるみたいだよ、教えてやんなよ。俺も聞きたいし」

「あー、それねー……」

別にあいつとわざわざ一緒にいた記憶はないが、同じ試験を受けていたことは事実。

ヒソカがハンター試験にいたことなんて言ったっけ。
そんなことも思ったが、確かフェイと電話してる時に油断しすぎてヒソカに背後を取られたんだった。多分その時の電話越しの声でばれちゃったんだと思う。面倒くさいからなるべくヒソカがいることは知られたくなかったんだけどな。

「私だってあいつがいること知らなかったよ。会場で偶然会ったの。たまに話しかけられたりしたけど、別に何もないから」

嘘は言っていない。多分。話しかけられたのはたまにじゃなくて結構な頻度だったし、ナイフとられたり色々あったけど。

「……………」

「な、なに」

私のことをじっと見つめてくるフェイタンはどうやら納得いかないようで。

「なまえは嘘つく時、わかりやすいね」

「えっ、」

助けを乞うようにフェイタン越しのシャルの方を覗くと、なんとシャルも同じことを思っていたらしい。

「フェイほどなまえのことはよく気にかけてるわけじゃないけど、さすがの俺でも今の嘘はわかったかなぁ」

「別にワタシだて気にかけてないよ」

「どうだか」

「お前喧嘩うてるか?」

「………ストップ!!意味わかんない!!説明して!!」

二人で勝手に険悪なムードにならないでほしい。そしてどうして私が嘘ついてると思ったのかも教えてほしい。

「チッ」

なんだか舌打ちが多い気がするフェイタンは説明してくれる気がないようで、かわりにシャルナークが言葉を発した。

「なまえって、普段は淡々としてる割にはフェイと話す時だけは“普通の女の子”って感じになるんだよ、それこそいつもは邪魔者は殺しちゃえ主義だなんて想像できないくらい」

「へ、へぇ……」

知らなかった。完全に無意識。フェイと話してる時は隙が多いというか、油断しちゃってるなとは思ってたけど……。

「でも嘘つく時は仕事の時とか他の奴らと話すみたいになってる、ってことだろ?フェイ」

「……まあ、そんなとこね」

片手にグラスを持ちながら一向に私の方を見てくれないフェイタン。

多分このまま私が嘘(とまでは言わないと思うけど)を押し通そうとしたらずっといじけたまんまなんだろうなぁ。
せっかく久々に会えたのにそんなの絶対むり。ナイフのこととかを言うしかない。まあ私自体は怪我したわけとかじゃないし、言っても大丈夫かな。

「何かあったかと言われれば、フェイと電話してる時油断しすぎて護身用のナイフとられた。あとちょくちょく本気の殺意こもったトランプ飛ばされたくらい」

へへ〜、やっちまいました〜、程度に言ったつもり。

だったんだけど。

「は?!お前何でそれもと早く言わないか。ささとヒソカの奴ぶ倒しにいくよ」

ガタンと椅子から立ち上がるフェイタン。いやいや店員さんもビビってるし。

「いや、ちょ、だから大丈夫だって!!私だって基本は警戒してたから攻撃もちゃんと避けたし、後ろ取られた時もすぐ能力使ったから」

急いで私はフェイの腕を掴み無理やり席につかそうとする。

「俺かーえろっ。あとはごゆっくり〜」

「シャルナーク逃げるな!!」

ちゃっかり自分の分のお金だけ置いてシャルは帰ってしまった。その間もフェイも帰ろうと、いや、ヒソカを探しに行こうとしている。

「本当何もないんだってば。さすがのヒソカでも掴んでた私の腕から炎が出れば距離置いてくれたから」

諭すように本当のことを言えば、フェイタンはしぶしぶ納得してくれた様子。

「ね?」

「……わかた。今回は許すよ。でも次何かあたら覚悟しとくね」


誰 に 対 し て 言 っ て る の ?

私?私なの?いやヒソカだよね?私じゃないよね?さすがに私に拷問とかしてこないよね?え?

「……ふっ」

「え、」

「何慌ててるか。もちろんヒソカに対してよ。ワタシがなまえを傷つけることはないね」

ふわりと優しく笑ったフェイタンの顔を見るのは、本当に久々のことだった。

「う、うん、そうだよねー、うん」

あー、だめだ。絶対今私の顔赤い。どうしよう。やっぱりフェイタンはいつになっても私の大好きなフェイタンだ。


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街の名前は適当です。適当というかポケ◯ンに出てくる街の名前です。

mokuji