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そう、クラピカさんのいう通り、私たちは二連勝。次で勝てば終わりだった。

なのにその次の勝負でレオリオが負けたせいで、終わると思っていたものも終わらず、50時間を失うことになった。

「みんな、ごめん……」

「いいよいいよレオリオ!!気にしないで次頑張ろう!」

いや私が許さない。本当にごめんと思っているなら今すぐこの場で死んで償ってほしい。むしろ私が殺してやる。

と言っても堂々と殺すのもハンター試験というものを受けている以上体裁がある。どこかの快楽殺人ピエロと同じように思われるのだって御免だ。

ナイフを投げつけて「あっごめん〜」?見えないように火をつけて「火事だ〜」?いやいやどれも無理がある。どうしようか。

本っ当に使えない。ありえない。

「今までに19人殺したが……」

私がレオリオ殺人計画を立てているといつのまにか4戦目、次はクラピカさんの番。

見た目は筋肉もりもりで強そう、と、でもなんか少しアホそう、を足して割った感じの奴が出てきた。

まず、本当に強い人はいちいち殺した人数を把握しているだろうか。正直こいつの武勇伝はどうでもいいからさっさと終わらせてほしい。


デスマッチを申し込んだ相手は、試合早々クラピカさんに殴りかかる。ほう、これまたアグレッシブなこと。

そしてその背中に見えたものは……、

「蜘蛛の刺青……」

いやいやいやいや。つっこみどころがありすぎて。
もちろん私の所属する幻影旅団にはこんな奴いないし、新メンバーの加入なんて聞いていない。そもそも刺青にナンバーがない時点で、私には偽物だということが丸わかりだ。

前にメンバーの誰かが、自分たちの真似事をしている奴らがいる、と言っていた。
その時は勝手にどうぞと思っていたが、いざ目の前で好き放題な言動をされるとカチンとくるものだ。

「ゴンくん、仮にあいつが参ったって言って終わっても、私がとどめをさすから」

「う、うん……?」

とりあえず、すぐ隣で二人の戦いを見ていたゴンくんに謎の宣言をした。

しかし私の出番はなさそうで、奴の背中の刺青を見たクラピカさんは、一気に表情が変わる。

「え、クラピカさんって、蜘蛛に恨みでもあるの」

彼の異様なオーラ、そして一瞬で相手の顔面を床に叩きつける行動見て思わず聞いてしまう。

相手のいきなり殴りかかってきたやつよりさらにアグレッシブでデンジャラスだ。
まだあまり関わっていないとはいえ、先ほどまでの温厚で冷静な彼からは想像できない動きから、少なからず“蜘蛛”に良くない思い入れがあることは安易に想像できる。

「クラピカは、自分の仲間を幻影旅団に殺された、って」

真剣な趣きでゴンくんが呟く。

なるほど。私としては心当たりがないが、初期メンバーではあるのできっとその虐殺にも加担していただろう。


結局4戦目を勝ち取り、3勝を終えたわけだが、なんとなーくその場の雰囲気が悪い。

うん、気まずい。実にきまずい。

向こうは私が自分の宿敵であることに気づいていないのだ。それどころか今は仲間とさえも思ってくれている。
一応、の意味で自分について詳しく知られないようにしてたけど、これはいよいよ私の素性がばれたら面倒なことになりそう。

人生イージーモードかななんて思っていたけど、私はあと何十時間もこの気まずい空間にいなければならないと思うと、どっと疲れが襲ってくる。

「はぁ……」

「なまえちゃん、ため息なんてついてどうした?次に進めるぜ!!」

おい気づいてくれ、お前のせいで無駄に50時間もこの(私が勝手に)気まずいと思っているメンバーと過ごさなければならないんだよ。

mokuji