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「いやーなまえちゃんお疲れ!!すげーな!!」

レオリオの言葉はもちろん、ああどうもと流す。いい加減お前に話しかけられるの好きじゃないって気づけよ。

「なまえさん全然動いてなかったのに!」

「体力使うの嫌いだからねー」

「それはそうとも、どうやってってあんな動きを覚えたんだ?」

え、何この人。クラピカさん怖い、怖い怖い。どうやってってそりゃあ蜘蛛での活動や殺しの活動ででございますけど。
変に自分について人に話すのは好きじゃないし、仕事柄良くなかったりする。ここは適当に答えるべきだろうか。

「お家柄?っていうのかな」

「へえー、仕事はどんなことしてるの?」

ニコニコと天使スマイルのキルアくん。

こいつ……わざとだ……。

飛行船の一件から少なくとも私が表の仕事をしていないってわかるだろうに。ここで言わせる気か。さりげなく聞いてきやがって。
絶対何か感づいていて私の素性を知ろうとしてるよね君。やっぱりイルミさんの弟だ。

さてなんて答えようか。

「えっとねー……、」

ちょうどいいところで二回戦についての話が始まり、みんなそちらに集中する。

次に出るゴンくんが前に出るが、キルアくんはやっぱり腑に落ちない様子の顔だ。

「さてご覧のように、ぼくはあまり体力に自信がない」

あ、私こいつとの勝負の方がよかったな。変に体力使わなずに済んだのに。

ゴンくんたちの勝負は、長さの違う二本のロウソクにお互い火をつけ、先に火が消えてしまった方が負け、というもの。

長いロウソクか短いロウソクどっちにするか決めさせるみたいだけど、どう考えてもこれ私のための勝負だった。
どっちを選んでも、仮に先にロウソクの火が消えたって、言っちゃえばロウがなくなっても火があり続ければいいんでしょ?絶対勝てた。絶対勝てた!!!

「何だか、表情が強張っているが……」

色々考えているとクラピカさんに私の後悔と文句で溢れた顔にツッコミを入れられた。
いや、クラピカくん?すごいどうでもいい話だけど、私の中でこのクラピカという男の敬称が定まらずにいる。

「いや、こっちの勝負の方がやりたかったなって」

「そうか、それだけならいいんだが……」

意味深な言い方をするのでその理由を尋ねると、ただ単に相手の男が変な細工をしているのではないかと疑っていて、私の表情が冴えなかったので私がその細工を見破ったのかと思ったらしい。
そこまで考えてるんだ、しっかりしてるなぁ。こりゃクラピカ“さん”だわ。

「だって長い方が長時間火が消えないに決まってるじゃん」

そんなクラピカさんとは対照的にスーパーピュアなゴンくんは長いロウソクを選択したみたいだ。

「ゲームスタート!!」

闘技場は風が強く、火が消えないよう気をつけなければならない。

そして気づいた頃にはゴンくんのロウソクの火は大きくなり、明らかに減りが早い。

純粋なゴンくんの選択は間違い……?と思いきや。

「うわーずるすぎる。ゴンくんかわいそうに」

「ひでえなおい!!」

「私の嫌な予感が当たってしまったようだ……」

「まあ、自分から仕掛けた勝負なんだから何か細工があっても仕方ないよね」

あの黒髪はあらかじめロウソクを4本用意しておいて、ゴンくんには不利なローソクを渡したようだ。

つまり、ゴンくんが短いローソクを選べば、早く燃える短いローソクを渡して、自分は長く燃える長いローソクを。
ゴンくんが長いローソクを選べば、早く燃える長いローソクを渡す。

キルアくんの言うことももっともだが、なんだかスーパーピュアゴンくんに対してそんな卑怯な真似は良くないと思う。

罪のない人を自分たちの利益のために殺してしまうような立場にありながらこういうことを思ってしまうものだから、我ながら気まぐれというか、都合がいいというか。

「火の勢いが強いってことは、ちょっとの風じゃ消えないってことだね」

しかしまあお見事。ゴンくんはその勢いを逆手にとって、相手のロウソクの火を消しにいく。

「ゴンよくやった!!」

「これで私たちの2勝だな」

mokuji