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飛行船から降りると何やらそこは塔のようなところ。
三次試験の内容は、『生きて下まで降りてくること』。制限時間は72時間。
さてどうしたものか。周囲に入り口らしきものはなく、タワーの外壁も窓一つないただの壁。
どうしようかなぁと迷っているうちにどんどん受験者は消えて行く。あ、隠し扉があるんですね。
適当に選んだ扉に入ると、一つの部屋になっていて紙が貼ってある。「多数決の道。君達5人は、ここからゴールまでの道のりを、
多数決で乗り越えなければならない」と。
あとなんかよくわかんない時計もおいてある。これで多数決しろってことかな?
5人、ってことはあと4人ここにくるってわけか。運良くキルアくんたち御一行がこないかなぁ、なんて、そんなに人生甘くないか。
誰でもいいからさっさと来いよと思っていると天井の扉が開く。
「いってて……、って、みんな一緒だったね!!」
「そうみたいだな」
「レオリオ、大丈夫か?」
「こ、このくらいで心配いらねぇ……」
どうやら私の人生はイージーモードみたいだ。
「あ、なまえさん!」
「どーも」
はじめにゴンくんが私の存在に気付き、あと2人、名前なんだっけ、忘れたけど金髪と眼鏡も挨拶してきてくれた。キルアくんは飛行船の一件があったからか、少し警戒しているみたいだ。
ひどいなぁ、どちらかというと君に協力するためにいるのに。
*
初っ端からこの扉を開けるか開けないかで多数決が始まり、道を進むと格闘場のようなところに出た。マスクを被った変なやつらがいる。
その中の1人が出てきて、マスクを外して何やらルールを説明しているようだった。
「我々は審査委員会に雇われた『試練官』である!!ここで、お前たちは我々5人と戦わなければならない」
試練官とバトルをする必要があるみたいだ。勝負は1対1で、戦い方は自由。自由ってなんだよ。
とりあえず3勝以上すればここを通過できるようだし、さっさと終わらせたい。
「おいおい、戦うって、なまえちゃんにも戦わせる気か?大丈夫かよ……」
単純に戦闘ならお前に心配されずとも5人の中では一番強いから安心してほしい。足手纏いみたいに扱われるのは癪に触る。あと男尊女卑精神があるならかかってこいぶっ殺す。
多分私はこのレオリオとかいう男とはソリが合わない。いい奴なのかもしれないけど好きじゃない。
「ご心配なさらずに、私が最初いきます」
「おいレオリオ、今のお前の言い方は女性差別のようなものだったぞ、少しは慎め。なまえさんもここまで残っているんだからそれなりの実力があるに決まっているだろう」
ごもっとも。逆にクラピカとかいうこの金髪は常識をわきまえている。まあ蜘蛛てある私が常識どうこう言える身じゃないんだけど。
「最初に出てくる奴は決まったかァ?」
スキンヘッドの前に出て、私ですと一言。
「おいおい、女だからって油断しねえぞ。戦い方はデスマッチ!!先に死ぬか、先に参ったと言った方か負けだ!!」
「お好きにどうぞ」
いやいや、私が負けるわけないでしょ。
と思ったけど、ここで能力を簡単に使うわけにもいかないし。
素手でやりやってこのゴツい人と勝てるのかなぁ。
多分、単純に腕相撲とかだったら負けてると思う。どんなに修行しても男女の力量差は埋まらないでしょ。こいつだってそこらへんの一般人じゃないだろうし、そこそこ強いからこそここにいるんだろう。
まあ基本的な体術とかは私が上だと思う。
どんな相手が来ようとも私の方が強いでしょ、っていうこの考え方がお前の一番の弱点だってフィンクスに言われたことあるけど。
「おーい!なまえちゃん!無理すんなよー!!」
「なまえさん頑張って!!」
ゴンくんとレオリオ(好まないので敬称略)の言葉を背中にして、スキンヘッドと向き合う。
「はじめ!!」
スタートと同時に一気に突進してくるスキンヘッド。
何発か殴りかかってきたので、そのままヒョイっと避ける。
「避けてるだけじゃ何も終わらねーぞ!」
馬鹿かこいつ。避けてるだけなわけないでしょ。
「もう一発……っ、グッ」
男は腹を抑えながら縮こまる。
「?!一体何が起こってるんだ?!」
「なまえさんの手を見ろ、小さなナイフを隠し持っているみたいだ」
「あ、本当だ!今の一瞬で……」
「あの出血じゃ、もう戦えないだろうね」
レオリオ、クラピカくん、ゴンくん、キルアくんがそれぞれ呟く。
その通りで、避けながら護身用に持っていたナイフを一刺ししておいた。まあ致命傷までは至らないかもしれないけど、とりあえず今は動けないくらいのダメージは与えられたと思う。
「どうする?とどめさして楽にしてあげようか?それとも降参?」
「ま、参った……っ、」
一試合目は、見事私たちのチームの勝利だ。
mokuji