06


断言する。私はハンター試験にこれっぽっちも興味はないし、合否も気にしない。

でも、理不尽なことは大嫌いだ。

二次試験の豚ちゃんクッキングが無事に終わり次のお題は『スシ』。そもそもそれが何かもわからないし、ハンゾーとかいうハゲの言った料理法を参考に試行錯誤して作った結果は不合格。ここまでは許せる。
確かに私のスシはもはや抽象アートのような得体の知れない何かだった。むしろ団長に見せたらいいお宝だとでも言ってくれそうな勢いの作品だ。

しかしその後合格者は一人も出ない。試験官のメンチはこれ以上どうしようもないとしてみんな不合格、と。こんなの、納得いかない。

それは周りも同じなようで、殴りかかる受験者もちらほら。
いやー、そんなんじゃ返り討ちにあうだけだって。ほら。

私も殴り込みたい気持ちは山々だし、負ける気もさらさらない。だけどここで目立つのは性に合わないし、私の目的はあくまでもイルミさんの手伝い、キルアくんの見張り。出しゃばるわけにはいかない。

さて、このイライラをどこにぶつけようか。

「殺意ダダ漏れだねぇ……」

「抑えてるつもりないし」

「スキだよ、そういうの」

「そりゃどーも」

いつのまにか私の近くに来ていたヒソカに適当に応対する。だから私に構うなピエロって言ってるだろ。


ゴゴゴゴゴ――

「飛行船……?」

上空に漂う飛行船。そこから降りて来たのは桁違いの強そうな雰囲気を纏ったジジイ、それもどうやら会長だそうで。よくもまああんなところから飛び降りるわ。

「ちと厳しすぎやせんかのう」

鶴の一声とはまさにこのことで、会長がメンチに何か諭すように言うとあっという間に試験内容の変更。まあすごいおじいちゃまだこと。

ハンター協会を率いるのがこの何かすごそうなジジイということはわかった。この人について行くハンター協会の人ってどんな人たちなんだろう。

……うん、1人知り合いがいた。知り合いというか、何回か私に仕事を依頼して来た奴。あの掴み所のない奴。そうじゃんあいつハンター協会に勤めてるって言ってたじゃん。今思い出したよ。え、ハンター協会のお偉いさんがこんな裏の何でも屋雇っていいんですか、パリストンさん。

まあこの話はまた今度として。


とりあえずやることは卵を持ってきて茹でて終わり、と。よし、これなら私にもできそうだ。問題はどうやって卵を持ってくるか。

メンチはサラッと終わらせていたが、きっとそう簡単ではないのだろう。ほら、何も考えてない馬鹿が突っ走って谷底に落ちていったよ。かわいそうに。

しかしこのままでは私もあいつらと同じ運命を辿るか、ここで脱落かにしかならない。さてどうしよう。

「なまえさん!」

そこでちょうどよく話しかけてくれたのがトンガリ頭、もといゴンくん。

「今から俺たち取り行くけど、一緒に行こうよ!」

なぜ私を誘ってきたのかはわからない。
しかし人を誘うまでということは何か彼なりの考えがあるのだろうし、ゴンくんと仲良くなる=キルアくんとお近付きになれるという方程式が既に私の脳内では成り立っているので断る理由などはない。
そしてもし何かあったら自分の命とキルアくんの命さえ守れればそれでいい。

「よろしくお願いしまーす」

と、心の中のずるい考えを見せないような笑顔で、谷へと走り込んだ。




mokuji