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「たっ田中!!ノヤ!!あれって……!!」

「あれはっ、あれはもしや、スカイツリー!!?」

「「「ウオオー!!!」」」

そうです、みょうじなまえ、見事数学赤点回避でーす!!
そして来たぜ東京。トーキョー!前日から田中とノヤと楽しみで仕方なかった。

しかしスカイツリーだと思ったあれはただの鉄塔らしい。音駒の副主将の人が教えてくれた。確か海さんだったっけ。

「ぶっひゃひゃひゃひゃひゃ」

「……なに笑ってんすかトサカさん」

「烏野の主将さーん。おたくのマネが俺に変なあだ名つけますヨ〜」

「あっこらみょうじ!お前はまた……」

「ひっ大地さんごめんなさい!!!」

久々に会った黒尾さんはやっぱりトサカだしやっぱり余計なことを言う。

「風景があんま宮城と変わんねーなー」

「思ってたのと違うよね……」

「そりゃ郊外だからな」

私と田中の評価に対しスガさんがツッコミを入れていると、黒尾さんが人数が足りないことを指摘してきた。
それに対し、大地さんが実は、と何があったかを説明する。

そう、奴ら――日向と影山は赤点回避ならずだったのだ。
え?私はって?もちろん赤点回避!!ヤッタネ!!鬼2人(新奈と縁下)のおかげだね!!ありがとう2人とも!!

「え、じゃああの超人コンビ今頃補習受けてんの」

「ああ。他の赤点取りそうな奴らはなんとか乗り越えたんだけどなぁ……」

チラリ、私や田中、ノヤを見てくる大地さんの視線が痛い。

「アラアラ、なまえちゃんもおつむが弱いのカナァ??」

「うるっさいですよ黒尾さん!!!今この場にいられるんだからいいじゃないですか!!!」

再度ぶひゃひゃひゃと笑う黒尾さんを見ながら、近くにいた月島がまあよく赤点回避できしましたよね、と見下してきた。おいなんだよコラ。

「失礼な。私だって進学クラスだよ」

「あの数学のできでよく試験大丈夫でしたね、何か裏があるんじゃないですか?」

なんだ月島の野郎。私が部活後毎日新奈の家で勉強してたの知ってるくせに。私はカンニングとかしてないし。

「月島ぁ!なまえはな、毎日休み時間に、力と新奈さんに教えてもらって頑張ってたんだ!!」

「ノヤ……!!」

「ノヤッさんの言う通りだ!俺たちのグループラインも一時的だが控え、帰宅後も頑張ってだなぁ……」

「田中……!!」

そうだ、そうなんだ。やっぱり私たち3人が赤点回避したことには変わりない。3人とも、努力したんだ。二年の赤点候補が見事にクリアしたんだ。

「私たち3人、よく頑張ったよ……!!」

「「ウオー!!!」」





「うおおお!!?」

なまえさんの言葉に呼応するような田中さんと西谷さんの雄叫びに続き、音駒の……、確かウイングスパイカーの人。うちのマネージャーが増えていることに関して何故か雄叫びをあげている。

普段ならただうるさいなと少し思う程度だけど、今の僕はもともと少しイライラしてたから、今回はそのイライラを加速させてくる。
自然と表情に出ていたみたいで、それに気づいた縁下さんがこちらに寄ってきた。

「月島、」

顔顔、と苦笑いの縁下さんに、すみませんと一言。

「うーん、いや、まあ、こちらこそごめんな」

……どうして、謝られるのだろうか。

今現在注意されていたのは僕の方で、縁下さんから謝ってくる理由がさっぱりわからず黙り込んでいると、思いもよらなかった言葉を縁下さんが発した。

「俺たちが勉強勉強ってみょうじに言いすぎたせいで、最近2人の時間少なかったこと気にして機嫌悪いんだろ?」

「………」

なまえさんがよく、縁下は本当に怖い、などと言っているが、ああ、こういうことも含めて怖いんだろうな。

「別に、元からそんなに2人で過ごしてたわけじゃないんで」

休み時間たまにフラっとやってくる回数とか、連絡とか、試験中減っていたというよりかむしろ皆無に近かったのは確かだし、それが少し不安だったのも確かではあるけど。

mokuji