人魚姫
2012/09/02

潮の香りがした。

振り返ると、君がいて
静かに笑った

何か言おうとして
開いて、閉じた

魚みたい
くすりと笑う君に

僕は曖昧に微笑む

波の音。

彼女の声は
波の音みたいだった

彼女は僕を見つめてから
悲しげに眉をひそめた

もう行かなきゃ。

彼女が僕を抱き締めた
それからそっとキスをした

さようなら。

潮の香り。

振り返るとそこには、
ちゃぷちゃぷ音を立てる波と
真っ白い砂浜だけがあった。

彼女はとても、冷たかった。


お題:波
春柚

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