あたたかいもの2012/05/08ここはどこだ
なにもない
なにも見えない
心が水分を失って
みるみるうちに渇いてく
あぁ、渇き切った心引きずって
見えない自分の手を振り回しながら歩く
刹那、電流みたいに思い出したきみの名前
僕は叫ぶ、きみの美しい名前
叫ぶ、喉を潰し叫ぶ
世界を壊し叫ぶ
声にならぬ声で、ただの音で叫ぶ
あああああああ
するとどうだ、僕を卵の殻みたいに包んでいた暗闇がひび割れ、弾けた
暖かい光に包まれた僕は、涙が止まらなかった。
頬をとめどなく伝うあたたかいもの、拭ってくれたきみの指は、もっとあたたかだった。
お題:非常口
貴
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