狐の嫁入り2012/09/18「あ、」
小さな男の子が空を指さす
「きらきらしてるね」
「あら、雨っ」
母親は慌てて洗濯物をとりこむ
「雨!はれてるのにね」
「お天気雨よ」
「おてんきあめ」
「晴れてるのに、雨が降ることよ」
「へぇ!」
母親は男の子と目を合わせ、微笑んだ。
「こういうのをね、狐の嫁入りっていうの」
「よめいりってなーに」
「およめさんになること、けっこんすること」
「そうなんだ!」
男の子は空を見上げ、笑った
「きれいだもんね、おてんきあめ」
その日、男の子は夢を見た。
真っ白で綺麗な服を着た狐が、澄んだ青空と降り注ぐ太陽の中で、幸せそうに笑っていた。
狐の服には宝石のような雫が太陽できらきらと光っていた。
春柚
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