はるのゆき
2012/01/19

雪が降っていると君が言うから
僕は外へでたんだ
春なんだから降るわけない
そう想いながら君が待っている丘に向かう

やはり、外はぴかぴかの晴天で
また騙されたかな
にやりと笑う

大きな木の下
君が手を振る


「降ってないじゃないか」
「降ってるわよ」
「どこで」
「ここで」
「降ってないじゃないか」
「ほら」


君の指先を見上げれば
澄んだ空に舞う薄紅色

僕は息を呑んだ
心臓がどきどきどきどき言っていた

しばらく黙って
それから口を開く


「こんな雪、始めてみたよ」
「ここでしか降らないからね」


他の人には内緒よ、そういって君は笑った
(そんな君がこの世で一番美しく愛しいと想ったのは、来年また春の雪が降ったなら君に告げよう)

春柚




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