薄荷のキス
2012/03/22

缶々に入った色とりどりの飴

ピンクはいちご
みどりはメロン
きいろはパイン

「あ、」

白い飴は薄荷味
会った時、貴方にあげた飴

「好きなのに」拗ねたら
「先に言ってよ」って頭を撫でた

「見て、薄荷!」
「よかったね」

貴方は優しく微笑んだ
帰りの車の中

飴玉舐めながら笑う
貴方も笑う

でも笑顔はお互い
どこか哀しげで

駅に着いた
車が止まる

一瞬、しんとなる車内

貴方の名前を呼ぶ
こちらを向く貴方に
顔を寄せて、唇を合わせた

「へへ、びっくりした?」

笑う私に、頷く貴方

薄荷の飴が溶けて、
一気に寂しさが増した

貴方は笑って手を握った

 優しい人
 泣き虫でごめんね
 好きで好きで仕方ないの

涙をたくさん飲み込んで
堪えきれず少しだけ泣いて

「またね」

手を振った

最後は、ちゃんと笑えたかな
貴方の寂しげな顔、頭から離れない

バスに乗り込んで座る
溢れ出す涙止まらない

上着を被って泣いた
薄荷の香りはもうしなかった

春柚




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