2.降り始めた雨2012/01/18その日は晴天だった。
真冬にしては暖かく、心地よい日だった。
僕と彼女は二人で作ったお昼を食べた。
グラタンとスープとサラダ。
とても満たされていた。
食事が食べ終わろうとしている頃、今まで楽しげに、小鳥がさえずるようにしゃべっていた彼女がぎこちなく口を開いた。
「ねぇ」
「なんだい?」
「あのね、」
「どうした?」
「…やっぱり、なんでもない」
この時、彼女が何を言いたいのか、僕にはすぐにわかっていた。
しかし、それがあまりいいことではないと言うことも、僕にはわかっていた。
「なに?ほしいものでもある?」
僕がこのとき、黙って流していたら、今のような状況になっていなかったのかもしれない。
けれど、僕は聞いてしまった。
きっと嘘だと思いたかったのだろう。
しかし、いつも外れる僕の予感はこの時には当たってしまった。
「違う、何でもない」
「何でもないことはないだろ。ほら、いって?」
彼女は、俯かせていた顔を、ゆっくりと上げ僕を見つめた。それから、いつもより少し血色の悪い唇を開いたり閉じたりして、再び俯いた。
僕は彼女を見つめ、ただ彼女が話し出すのを待っていた。
すると、沈黙の間をぬって外から元気な子供の笑い声が聞こえ、バタバタという足尾がした。
僕は彼女から目をそらし、窓を見た。
先ほどは晴れていたのに、だんだん灰色になってきていた。
ふと彼女をみると、いつの間にか、彼女は再び僕を見つめていた。
いち、に、さん
彼女は精一杯の笑顔を作って言った。
「結婚、もう少し、考えない?」
ざぁっと、雨が降る音がした。
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