1.雨音が止んだ2012/01/18雨が、止んだ。
部屋が死んだように静かに冷たい。
一人では広すぎる部屋が、まるで出ていけと言っているかのように沈黙している。
…どうやら、自分は雨が代わりに泣いてくれているように感じていたようだ。
鼻の奥が、つんと痛む。
「空にも見放されたか」
自嘲の笑みが浮かぶ。
つい、と床においてある薄汚れた淡い黄色のクッションに視線を向けた。
「ああ、くそ」
まばたきを繰り返して視界をクリアにする。
そしてゆっくりと、床から立ち上がり、寝室へ向かう。
床の冷たさが、いつもよりも身に染みる。
おもむろに、クッションを拾い上げた。
ふわり、甘いの香りがしたような気がして切なくなり、衝動的に抱き締める。
少し早足で寝室に入り、布団に倒れ込んだ。
「 、」
名前を呼ぶと涙が溢れた。
「 !」
一週間前、僕は世界一愛しい女性を泣かした。
prev | next